akihiko810

フェアウェルのakihiko810のレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
3.9
gyaoで視聴。アメリカ映画(舞台は中国)。

NYに暮らすビリーと家族は、ガンで余命3ヶ月と宣告された祖母ナイナイに最後に会うために中国へ帰郷する。家族は、病のことを本人に悟られないように、集まる口実として、いとこの結婚式をでっちあげる。ちゃんと真実を伝えるべきだと訴えるビリーと、悲しませたくないと反対する家族。葛藤の中で過ごす数日間、うまくいかない人生に悩んでいたビリーは、逆にナイナイから生きる力を受け取っていく。

奨学金の審査に落ち、アメリカでの人生がうまくいかないビリー。祖母の余命宣告を知らせるかどうか悩む。中国では余命を本人に告げないのが慣例だが、アメリカではそんなのは人権侵害だ。アメリカ(西洋)では、人生は個人のものだが、東洋では、人生は家族全体のものなのだと諭される。余命宣告する側の方も負担なのだと。
主人公ビリーの、アメリカと中国ふたつのアイデンティティを持つが故のそれに引き裂かれる葛藤、そしてそれを包み込むような祖母の無償の愛、そしてそれゆえに余命宣告をした方がいいのかどうか迷う、が丁寧に描かれていた。
しかし、でっちあげ結婚式の新婦役を引き受けたアイコ(日本人)は本当に優しい人だなー。言葉もわからない中国で、彼氏家族の嘘に付き合うのだから。この「多国籍家族」という多重性・異文化性の理解の困難さが、本作の深いテーマなのだろう。

地味な展開で、特にこれといったお話の展開は起きないのだが、滋味のある佳作だと思った。
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