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罪の声のStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

罪の声(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

父と子の話だと思った。

過激派と勘違いされ殺され、死後、警察からも過激派のレッテルを貼られた父を持つ達雄は自らも学生運動にのめり込み、警察を憎む。

警察に届け物をしたら交番の警察官に届けた金を着服され、窃盗犯の汚名を着せられ自殺した父を持つ真由美もやはり警察に恨みを抱くようになる。

元刑事だが辞職し、「金持ちに一矢報いる」ためにギン萬事件を起こした生島の娘、望は命を落とし、弟の聡一郎もまた悲惨な人生を送ることになる。

唯一、光雄という健全な父を持った俊也だけがまともな人生を送る。

親ガチャをこれ以上ないくらい描写した映画と言ってもいい。

主犯の達雄は子どもを持たず、事件が起こった1984年にしがみつく"fossil"(化石)となったが、それほど彼にとって父の呪縛(父になることへの恐怖?)は強いものだったのだろう。

阿久津の「それで日本は変わりましたか?」「あなたのやったことは子どもたちの未来を変えたことだけですよ」という追及は重いが、一歩間違えると「現状に文句を言うな。悪いのは体制ではない」という現状追認のメッセージにもなり兼ねない。社会部の記者にもかかわらず、現状への危機感みたいなものは皆無というキャラ造形が気になった。記者だから当然なのかもしれないが彼だけ家族関係も描かれず、事件を追うだけのエージェントとしての様は、空虚な中心のようである。そして手掛かりからわらしべ長者のようにトントン拍子で真相へと辿り着く。そんなに簡単に失踪した人間が見つかるだろうか、と疑問に思った。

点と線が繋がるのではなく、ゴールの決まった線に沿って筋が進む感があり、あまり「関係者のその後」の開示の待ちに待った感がなかったのが残念。

「阿久津と俊也が同年代で二人とも好きな映画が同じ、それが二人の共通記憶となって親近感を覚える、その映画は交通事故後に実は死んでいなかった望が字幕翻訳者になって訳した映画だった、イングランドのヨーク在住の達雄も望の夢を叶えるのに協力した、くらいのプロットツイストがあったらなあ〜」と思ったが、そこまでやったら絵空事感が半端ないので、あのビターな終わり方でよかったのだろう。
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