R

罪の声のRのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
3.9
先日見た『花束みたいな恋をした』の監督が『ビリギャル』の監督であると知り、お? おれひょっとしてこの監督好きなんちゃうかな、と思って調べて見てみたのがこの作品。ところが、正直、前半はまっっっったくのれず、結構長い映画なので見始めたことを後悔。何度か途中でやめてしまおうかとも思ったが、いやー、もう20分見てもーたしな、30分経ったしな、これでやめたら二度と見ることないやろな、と思いながら見続た。まずひとつ目に引っかかったのが、「グリコ・森永事件」という実事件を基にしたサスペンスということで、実際いまも存在する企業名がそのまま出るんやろと思ってたら、「ギンガ・萬堂事件」と名前が変わってて萎え。また、そのテーマ性から、彩度を落とした暗めのハードボイルドな映像を期待してたら、『花束』や『ビリギャル』同様、明るくてやわらかい映像。そして、演技も映画的リアリズムとはかけ離れた、どっちかというとテレビドラマっぽい感じ。特に、京都でスーツの仕立て屋さんをして、妻と娘を養う曽根という主人公の男を演じる星野源の演技が……まったくハマれず。ある日、彼が自宅の押し入れを開けてみたら、父の遺品ボックスを見つけ、そのなかに謎のカセットテープと英語で書き込まれたノートを発見。テープを再生すると、自分の幼少期の声が流れてくる。「キョウトヘムカッテイチゴウセンヲ2キロ、バステイノ……」 筆記された文字をたどたどしく読んでるような録音。そして、ノートの中の文字を見てみると、あるページに大きくGINGA、MANDOの文字が。それをネットで検索すると、本来Googleとでてくる検索エンジン名がSoofle……トップに上がってくる検索結果を見ると「ギンガ・萬堂事件—Wakupedia」となっている……何そのビミョーな変更! 逆に気になるわ!!! そこ普通にGoogleとWikipediaでよくね? それ許可いるもんなん⁈ とかビミョーに変なところが気になって、硬派リアリズムを期待していたボクは完全にガン萎え。まぁええわ。一方、大日新聞社という新聞社では、年末に当事件の記事を公開するということで、もう一人の主人公、阿久津が企画・調査を担当。平成が終わるタイミングで、時効の切れたこの未解決の事件のミステリーを追うことになる。ちなみに、この事件がどんな事件かというと、1984年、お菓子の有名なメーカー「ギンガ」の社長が誘拐され、自らを「くらま天狗」と名乗る犯人は、身代金10億円を要求、だが誘拐された社長は監禁から自力で脱出、くらま天狗はその後、店に並ぶお菓子に青酸カリを入れたものを混入すると脅迫、また警察に数多の脅迫状を送りつける。しかし、犯人は見つかることなく、事件は未解決のまま時効を迎えた。というもの。ちなみに現実では、「ギンガ」はグリコ、「くらま天狗」は「かい人21面相」で、犯行のプロセスが多くの国民の注目を集めたため、「劇場型犯罪」と呼ばれた。本作は、未解決のこの事件の真相をフィクションとして描いている。新聞記者の阿久津を演じるのが、日本を代表する役者、小栗旬ですが、僕が彼を見るのはたぶん二作目。星野源演じる曽根は、自分の声が日本を騒がせた大事件に利用されてしまったことから生じる罪悪感を晴らし、誰が何のためにそんなことをしたのか探りたい一心で調査を行っていき、この二人が徐々にからみながら、やがて協力して真相を暴こうとする流れになっていく。まぁ別にそれ自体はいいんやけど、二人が無駄にバディー感を出す川沿いの道シーンは、ちょっと観客サービス感が強すぎて、自分的にはこれにもノリそびれ……。あと、犯人たちが集まって会議を開くために使われたかもしれない料亭の店員さんも、演技うまそうではあるんやけど、映像の雰囲気にマッチしてなくて、演技がデカすぎるように見え、さらに、いろんな人物の名前がたくさん出てきて、どれがだれ、だれがどこ、がややこしくなりはじめて、必死に追っていかざるを得なくなったあたりから、ようやく、半ば強引に、ストーリーにハメられていく形になった。さらに、途中からたくさん出て来る、脇役のおっさん、おばはんたちの演技がめちゃめちゃうまくて、脇が次から次にすごくね?ってなり始めてから、かなりのめりこんでいった。特に良かったなと思った俳優さんが、堀内正美という人で、金融系の話をしてた人なんやけど、声としゃべり方が妖しく独特でめちゃくちゃ良かった! ほぼちょい役のこの人のおかげで一気にストーリーに入り込めていった。あと、もう一人めちゃくちゃ良かったのが、総一郎という人物の母親の役をしていた人、女優さんの名前分からんねんけど、あまりにもごたごたし過ぎたために放火して逃げるシーン、野蛮な男たちに搾取され続けることを子どもたちのために耐え続けた母。その母が、一心不乱に泣きながら「早よ行き! 大丈夫やから!」と叫ぶシーン、そして、息子の葛藤、このシーンは本作の中で最高に美しくドラマチックなシーンだったと思います。それはこの母親役の女優さんありき! 素晴らしい!!! ほんで、その後の総一郎が、またやばかったですねー。宇野祥平という俳優さん。一目見てこの人はすごい! と思わせる吸引力。本作の所謂イケメン俳優たちのだれよりも一瞬にして感情に飲み込ませる俳優力。すごいなー。乱暴に言うたらイケメンというからは程遠い人やねんけど、確実に本作のだれよりも印象に残る演技をしている。もう僕的には上記の3人が見れただけで、本作を見る価値は十二分にあったと言わざるを得ません。この3人を見るためだけにもう一回見てもいいくらい。ほぼずっと会話だけで進んでいく本作を途中からのめり込んで見れたのは3人のおかげ。てか、会話だけで長い上映時間をここまで見せるってすごいな、と。個人的に全体的にディレクションが好きでなかったので、脚本が相当良かったのかもしれない。いやー、この題材だったら、もっと硬派でダークな70’s後半みたいな雰囲気で見たかったなー、社会派の主張もこんなに声高じゃなく、うっすら感じさせるくらいだったらなー、とないものねだり。けどそれやったら今の日本では売れへんねやろなー。そして、最終的に、3人リユニオンのシーンでは感情が高ぶって涙さえ流してしまいました。やられましたわ。最終的は良かったです👏とてもよかった👏
R

R