lapin2004

ブラック・ウィドウのlapin2004のネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

今まで断片的に示唆されてきたナターシャ・ロマノフの過去。謎に包まれた出自、かつてロキが口にした「赤い血に染まった帳簿」(黒歴史)、クリントとの関係…

本作で描かれる題材はMCUを追ってきたファンからすれば非常に興味深いものであり、冒頭から緊張感をもって展開してゆくストーリーに引き込まれた。スリル、サスペンス、アクション、ギャグも豊富にあったが…しかし「傑作」がデフォのMCUクオリティ基準からすると、特にアクション面で物足りなさを感じた。見せ方というか。。一年間の公開延期でハードル上げすぎたかな。

ブラック・ウィドウと言えば、身長160cmの小柄な体躯で屈強な敵兵士やエイリアンを柔能く剛を制してバッタバッタ倒すのがアベンジャーズの中にあって唯一無二のカタルシスなのだが、敵兵士がタスクマスター含め洗脳された女性(フィジカルは互角、操られているだけの善人、同じ境遇の後輩)ということで、いつものように容赦なく射撃したり鈍器で顔面潰したり槍でブッ刺したりと過激にクールにバッタバッタ…とは倒しにくかったのだろうか?ドレイコフは老人だし刑務所の連中は「敵」ではないしみたいな。

『エージェント・カーター』(2015年)では本作にも通ずるレッドルーム・アカデミー出身のロシア人スパイ ドッティが不気味に強く怖くエゲツなく描かれており、武闘派エージェントであるペギーとの肉弾バトルはド迫力だった。本作もレッドルーム絡みの刺客が登場しそうという事で女性エージェントならではの強さ怖さが観られることを期待していたのだが。(ドレイコフと催眠博士は通じるものがあるな)

「アクション弱め」の印象はパティ・ジェンキンスやキャシー・ヤンといった近年アメコミ大作を手掛けた女性監督と共通する部分であり、女性監督にとって一つの「壁」なのかも知れない。もっともこれは個人的印象であり、これが最適なバランスと感じる人もいるだろうが。ジェンダーイメージで語るのは良くないのだろうが、化学反応で儚く輝く蛍をウィドウズに重ねる抒情性は女性監督らしくて良かったと思う。女性監督がアクション大作を手掛ける流れはまだ始まったばかりなので、これから革命児的な監督が登場するのを期待したい。


ともあれ制作総指揮にも名を連ねたスカーレット・ヨハンソンの「卒業制作」。ブラック・ウィドウ10年間の集大成しかと受けとりました。ここまでのキャラクターに成長するとは感慨深い。そして寂しい。。

ウインター・ソルジャー、クロスボーンズ、プロキシマ・ミッドナイト、コーヴァス・グレイヴ、そして今回のタスクマスターといった強敵に果敢に立ち向かい、チタウリ軍の侵入経路であるワームホールを塞ぎ、テロリストから何万人も殺せる細菌兵器を奪還し、ヴィジョンとワンダを襲ったブラックオーダーを撃退(コーヴァス・グレイヴを戦闘不能に追い込む大金星)、そして命を捨ててソウルストーンを獲得し宇宙の半分の生命体の命を救った。アベンジャーズ というチームにおいても、独断が先走り気味のトニーやキャップに意見したり、ハルクの鎮静化・覚醒、非行に走ったホークアイを連れ戻すなど重要な役割を果たしてきた。スーパーパワーを持たない小さな女性が残した功績はあまりにも偉大だ。個人的に一番好きなシーンはシットウェルをビルから蹴落とすシーンかな。

ロス将軍(ウィリアム・ハート)はMCU在籍12年間でブラック・ウィドウ以上の古参ということになりますが身体に気をつけてまだまだMCU世界で活躍して欲しい。あとクリントさんも身体に気をつけて。
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