やべべっち

家族を想うときのやべべっちのネタバレレビュー・内容・結末

家族を想うとき(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

この映画は「チョコレートドーナツ」を観た次の日に観た。ケンローチ監督の現在に蔓延る「ギクエコノミー」による搾取について描かれている。


この映画はある程度誇張はあるものの実話に基づくものらしい。1番下にその記事を貼り付けておく。

AIやSNSの発展は人から仕事を奪ったり、人が楽になり余暇を過ごせるようになるのだろうか。管理者側は末端の人間の動きをより正確に把握する事により搾取するだけなんじゃないだろうか。リッキーの受けた待遇は独立した個人事業主と言えば聞こえは良いが責任を末端に取らせるだけの汚いやり方である。

こういう汚い弱者の弱みにつけ込んだやり方は手を変え品を変え編み出してくる。悪気はない強者は弱者の多様性など知った事ではない。では弱者としてはどうするべきなのか。どんな時もいざとなれば中指を立てて仕事を辞めるつもりで仕事をした方が良い。

この映画ではキレまくった人が出てくる。リッキーの同僚が元締めみたいな奴にキレまくっているシーンが序盤にあり、リッキーもキレるし、最後にはアビーもキレてしまう。キレる事が日常茶飯事になってはいけない。その前にやっぱり何とかしないといけない。

健全な社会生活を送る為には適切な「余白」が必要である。リッキーとアビーがジェーンのグラフィティを一緒に見ているシーン、アビーが緊急で介護に向かう時に家族皆んなで歌いながらバンで向かうシーン。人生はこういった余白の為にある。

私と同じ病気を10回再発した人が言っていた事がいつも心に残っている。
「誰にでも仕事上で会ったら胃が痛くなる人がいるだろう。その人は自分が死にそうな時助けてはくれなかった。本気で心配してくらた人は家族や本当の友人だけだった」

それは自分が大病した時に感じた事と全く一緒だったんだ。

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イギリス南西部ドーセットのクライストチャーチに住む53歳のドン・レーンは、英国最大手の配送会社「DPD」でアパレルメーカー・ネクストやショッピングサイト・エイソスの衣服などの配達員として19年間働いていた。レーンは糖尿病を患っていながらも、あまりに配達スケジュールがタイトなため病院に通うことができず、ある日、運転中に倒れ、糖尿病性昏睡に陥ってしまう。もう限界が近づいていた彼は、糖尿病によって引き起こされた目の症状の治療のため、事前報告して休みを取った上で診察を受けに行った。しかしDPD側は欠勤によって依頼分の配達をこなすことができなかった代償として、彼に150ポンドの罰金を科した。DPDは配達員を業務委託扱いにし、荷物を配達するごとに報酬を加算する方法を採用し、ドライバーが依頼した分の配達を達成することができなければ損害賠償を請求する規約を敷いていたのだ。
もし体調が悪くて働けないならば、配達員たちは、カバーしてくれる代役を予め用意するか、制裁金を支払うかしかない。彼らは、有給休暇や最低賃金を保障された労働者として扱われていなかった。レーンは、罰金制度による請求を恐れていたために以前から何度も予約していた診察を飛ばして勤務に出ていたのである。それ以降、追加の罰金を支払う余裕もない彼は、病院に通えないままクリスマスの配達ラッシュの間も無理をして働き続け、その結果、2018年1月4日に死亡した。