このレビューはネタバレを含みます
【21世紀版「はたらけど はたらけど …ぢつと手を見る」】
もうイヤだ〜
と観ていて言いたくなる4人家族の日々。
“Sorry we missed you.” は配達時の不在連絡票。仕事に追われるあまり、配達人自らが自宅に留守がちになってしまう状況を皮肉っているようでした。
配送拠点の責任者Maloneyは血も涙もない典型的なパワハラ野郎でしたが、彼自身も本部からの指示と洗脳により売り上げに心血を注いでいるのでしょうかね。
人を人と思わない奴のために働くほど虚しいことはありません。辞めたらいいのにと言いたくなりますが、他の業種も続かなかったようだし、既に家計は火の車、借金返済、養う家族に子供達の学費。切迫した現実が思考回路を麻痺させる。大人が充実した人生を送れない世の中で、どうしたら子供が将来に希望を抱けるのか。自転車操業しながらマイホームを切望する人生設計には疑問ですが、家族の幸せを願って仕事に励むもむしろ壊れていくという悪循環と労働力の搾取は上手く描かれていました。
ただ、最初から壊れている家庭しか知らない者からすれば、貧しくても家族想いで働き者の良い両親だと思いました。幸せな時間が記憶にあるからこそ、家族が壊れていくのが辛いのですよね。例え怒鳴ろうとも、一回叩いてしまっただけで後悔してくれる親なんて充分立派に感じます。息子Sebの非行は構って欲しさ故でしょうが、そもそも親から愛情を得られると経験し期待しているから起こす行動です。子供の為に恥をかいてくれる、心配してくれる親がいるだけ幸せだという警察官の言葉はごもっともです。Sebの女友達の方が、家庭でも学校でも居場所がなくて悲惨だと思いました。
訪問介護士のママが愛情深くて素敵でした。辛い時、普段通りに接してくれる患者さんに救われることがあるんですよね。
労災?死亡保険??
パパはとうとう最後の手段に出てしまうのでしょうか…。
幸せになって良い普通の家族がどうやっても幸せになれない、現代の闇にどっぷり浸かれる作品です。