イルーナ

ハッパGoGo 大統領極秘指令のイルーナのレビュー・感想・評価

ハッパGoGo 大統領極秘指令(2018年製作の映画)
4.0
ムヒカ大統領を題材にした作品は色々ありますが、本作は「世界で初めて大麻を合法化」という部分に着目した変わり種。
一応フィクションなのでちょい役かなと思いきや、結構本筋にガッツリと絡んできます。
いつもの清廉潔白なイメージとはちょっと違う、やや黒いイメージのムヒカ大統領の姿は結構新鮮かも?
ポスターはシリアスそうな雰囲気なのに、邦題がえらくノリノリで笑ってしまいますが、ゆるい雰囲気とはマッチしてます。
一方原題は「Get the Weed」で、アスファルトタイヤを切りつけながら暗闇走り抜けそうなタイトル。
で、ストーリーはというと、

ウルグアイ、反社会組織の資金源を断つために大麻合法化→
薬局を営む親子が大麻入りブラウニーを売り出し大ヒット→
ところがその大麻は密輸品だったのでお縄に……→
実はウルグアイ国内には大麻がありませんでした。国民の不満爆発!→
釈放と引き換えにアメリカで大麻の供給ルートを見つけてこい!報酬はカボチャを持てる分くれてやる!

……という、色々突っ込みたくなるような展開。
ただ、「合法化したのはいいが、国内に肝心の大麻が全然なかった」という部分は本当らしい。
こういう作品にも出演するムヒカ大統領、懐が広すぎる。実際何度も死にかけたりする壮絶な人生を歩んでこられた方なので、これくらいの描き方は何てことないのかも。
そもそもこの映画が作られたのが、監督が友人たちと作った「大麻入りブラウニー販売!」というウソ企画動画が100万回再生されたことで、国民が大麻合法化に関心があることを実感したことがきっかけだという。
本作に監督が3人もクレジットされているのはこのため。
ちなみに報酬のカボチャというのが細長い形で、日本人がイメージするものとはまったく違う種類だったりする。

こうして国の命運をかけた極秘ミッションを託された親子。そして後から助っ人で警官のおっさんも参加。
小国出身の彼らの目でアメリカ各地の大麻事情が紹介されていくことになるのですが、大麻の集会はやはり日本から見ると「?!」となりますね。色々な意味で。
日本だと大麻って、ひたすら悪いものだと教育されるから余計に。
しかし供給ルートを見つけるのは州法の壁もあったりして、なかなか上手く行かない。
タイムズスクエアでミニオンやらミニー、ウッディといった面々に大麻のありかを聞き込みしまくる姿には失笑。
そんな中で突破口となったのはジャマイカ人の組織だった……
このジャマイカ人たちと打ち解けるのがサッカーというのがいかにもウルグアイらしい。実際にフォルランとかスアレスの名前が出てくるしね。
ユニフォームの色がバラバラでも全然気にせずプレーしていたのが印象的。
あとちょっとしたアバンチュールが描かれるのはやはり南米の性か。それにお母さんと警官のおっさん、いくら何でも仲が親密すぎる(S○プレイ……)

「ユーモアは日常生活に不可欠だし、皆が楽しめればそれでいい。それに、これはとても共和国的な話なのがいい。政府高官を笑い飛ばす共和国的なことには価値がある。でも時には真面目に働きなさい」
最後はムヒカ大統領の言葉で締めくくられますが、改めて、この寛大さに敬服です。
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