北斗星

朝が来るの北斗星のネタバレレビュー・内容・結末

朝が来る(2020年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

女が1人で子供を産むということは、その後のその女性の人生を激変させる。
運命が大きく変わってしまう。

『なかったことにしないで。』が、正にこの映画のテーマだと思う。

まず、永作博美と井浦新側から養子縁組で子供を授かり育てていく人生を描く。
その後、少女の軌跡を描く。
その前にいきなり大人になった少女が家に訪ね、脅迫まがいの言葉を発する。見ている側も少女の変わりようにビックリしてしまう。

そしてあの黒髪だった少女が金髪に染め、いきなり家に上がり込んできてこんなことをするはずがない。夫婦と観てる側は信じこんでしまう。

だか映画は、妊娠中と出産後の少女の人生を丹念に描く。
この少女の視点がなければ、少女がいきなり栗原宅に訪ねてくる点は全く説得力がなかっただろう。

少女はどこまでも透明で、映画の最後までそれを貫く。とにかく『きれい』なのだ。何がきれいなのかは作品を見れば解ると思う。

子供を産んだ女はそのことを刻印を押されたかのように、一生肌身に感じて生きていかざるを得ない。
それは甘美なことなのか、或いは刧罰か?
わからない。

子供が幼稚園から帰宅したとき、少女は頭を床に着けて涙ながらに謝罪する。逆にそこまでできるのは、実の母だからではないか?そして自ら身を退く。

ラスト、少女が職場から行方不明になったと聞きサトコは慌てる。私も少女が絶望してしまい自殺したのではないかと心配する。

『やっと見つけた』とサトコが笑顔で少女に声をかけた朝焼けのシーンは、広島の夕暮れ時に少女がじき生まれるお腹の子に静かに語りかけた場面と重なる。
サトコの顔も朝焼けに染まり、いつもなんとなくアンニュイに感じたサトコの表情が明るく輝いた気がした。
少女も我が子をいとおしそうに見つめる。

浅田美代子が広島の施設で枯れた鉢を手でちぎりながら、白髪混じりの髪に化粧っ毛のない姿を見て、ああこの施設ももう終わりなのかな?と一瞬でわかる演出。浅田美代子も上手いと思った。

木や花や風の音で表現された四季の移り変わり、陽光がどの場面でも印象的に映っていた。
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