KH

WinnyのKHのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
3.8
2024年度の年間ノルマ70本中41作品目。
見させて頂きました。

公開されるまでこちらの事件については全くと言って良いほど知らず、
ざっくりと当時どの様な感じの事件だったのかなどの背景を履修しました。

今回はNetflixでクリップしてあったものをタイミング的に見れる隙間時間が出来たので視聴となりました。

まずはネタバレなしの率直な感想をば述べます。


『なんと言うか、終始イラッとする様な内容でした。もちろんそれは作品がダメというわけではなく、こちらが事実に基づく事件を扱っているからな訳で、本当にこんな事が起こっているのであれば絶対に許されて良いはずがないし、
もっと色々やりようがあったはずなのに頭の硬い人間の思考や仕事で貴重な人材が不当な扱いを受けているのが正直言ってイラつきました。
また、こちらで主人公を演じた東出さんの芝居が久々に見れたのは嬉しいですし、やっぱり何がどうあっても良い芝居をする役者なんだなと改めて感じました。

映画自体は非常に良いのですが、仙波敏郎さんの事件がどうなったのかの後日談などがなく、あれで終わりなのかというのが気になりました』

また、ここから先はネタバレを含む感想になりますのでまだ見てない方はご注意を、

少しネタバレみたいな感想をしてしまったのかもと思ってはおりますが、
今作はWinny事件と並行して、
元愛媛県警察、仙波敏郎による裏金問題の内部告発も取り扱っているのですが、

こちらも作品を見終わった後に少しだけ調べたのでちょっと補足させて頂きます。

実は1995年、消防士だった仙波さんの長男が勤務先の署長を刺殺するという事件を起こしており、妻と責任を取って心中しようとしたが、次男に引き留められ思い止まり、警察官を継続する事となったが、その後執拗な嫌がらせ等で入院したりしております。
また、2001年には奥さんは胃がんで他界しており仙波敏郎も脳梗塞で入院しています。

また、長男の事件を担当した弁護士と知り合いになった事で、警察の裏金問題を取り扱う同弁護士からの依頼がありそれを承諾。

という流れがあります。

作品内で仙波さんを演じた吉岡秀隆さんが
作中に出てきた瞬間から自身のやっている仕事に対して猜疑心というとか、何か諦めの様な様子だったのが印象的でしたが、過去にこれだけの背景があったことを知り、
もしかしたら自分が例え危険な目に遭ったとしても構わないという自暴自棄の様な様子だっのかもと言う印象を改めて受けました。

また、長男の刺殺事件がどの様な事件を起こしたのかは調べても出てこなかったですが、
もし仮に職場の上司からの圧力や嫌がらせによりその様な事件に至ってしまったのだとしたら、

仙波さんは正しい方法で、権力と戦う姿を
事件を起こしてしまった長男に見せたかったのではないかという気がします。

また、元々は仮名の役だったのですが、
仙波本人から実名を使って欲しいと言う要望があり、記者会見で発言したセリフは一言一句そのまま使用されたとの事です。


ではWinny事件の方に戻りますが、
作中にはいくつもの例え話が出てきます。

例えばナイフの例え話が予告編でもあったので非常に有名なのかなと感じましたが
実際は道路に例えていたそうです。

高速道路で事故起こしたり、スピード違反したり、毎日犯罪が発生しているけど、

道路を作った人が捕まる言われはないといった例えだったみたいです。まぁナイフのほうがわかりやすいですよね。

また、作中であまり言及されてない
ジョージオーウェルの『1984』は辛うじて知っていたのでホッとしましたが、
ざっくり言うとディストピアSF作品ではありますが、監視社会による恐怖や弊害などを扱った小説です。確か家にあるテレビが監視カメラになってるとかそんな感じだった様な。
すいません詳細を忘れてしまってますが、
こちらは映画にも確かなっている様な、、僕は見た事がないですが、いつかそちらも見たいなと思います。
街中に貼られた『big brother watching you』
というヒトラーみたいなポスターの絵はかなり有名だと思いますので気になる方は調べてみてください。

また、現在この国はそんな監視社会になり得てしまっている部分もあります。
例えば、何かを言ったりやったりした事で、それをスマホで撮影されてしまい、許可も取らずにSNSで流出されてしまったりと、

中には違法と呼ばれる行為もきっとありました。しかしSNSを作った本人が逮捕されないのはもちろん、
それを取り扱う人間のモラルやリテラシーが重要なのだとまぁわかる人間にはわかっていると言う世界になりました。

しかし、日本人が日常的に使うそう言ったソーシャルメディアサービスは基本的に海外産であり、
国産のサービスよりも主流となってしまっているのに今作の事件が全く関わってないとも言い切れない。
金子さん逮捕から無罪を勝ち取るまで7年と言う歳月が、彼から生まれるはずだった世界に匹敵しうるサービスを奪ったのは紛れもない事実であり、
これから誕生するはずだった若手が萎縮したのも少なくとも事実だ。
警察官が裏金を作成する上で作った領収書がWinnyによって明るみに出たのも事実であり、

結局はどんなに便利なツールでも使う人間がというリテラシーが、
警察官という本来、法の番人が違法なことをしているのは、そんなモラルやリテラシーのない人間と何がどう違うのかという事を改めて気づかせてくれている。

我々は相対している人物が警察官というだけで清廉潔白であり、彼が言っていることは素直に従ったほうが良いと妄信している部分はあれど、
SNS上には警察官のこれは法的には正しいのか?という動画は腐るほど出てくる。また実際に汚職を行なっている警察官も多いし、
やはり大切になってくるのは、どうあっても正直に生きるということなのかもしれないと感じます。

また、この作品を見て時代と法律は速度が全然間に合っておらず、
こう言ったインターネットの犯罪も増える一方で、これほど情報というものが飛び交う中、未だに国営放送だからと受信料を取るという訳のわからんことを続けている会社もあるので、

賢い人が賢い判断をしてくれることを祈るばかり、

また、作中の弁護士団にいた桂さんと言う比較的老齢の弁護士は横文字が並んだり知らない単語の羅列を聞くだけでも受け入れるだけの脳のキャパがオーバーしているという表現は全くその通りで、
多分この国を築いてきた方々も次から次へと目まぐるしく変化する世の中に多分付いてはいけないけど、でも責任ばかりが増える一方で、対応に追われてしまうのが印象的で、
この辺もうまく支え合っていければきっとこの国もまだまだ建て直せると信じております。

かなり話が脱線したので今回はこれくらいにします。
KH

KH