湯浅監督の作品には好き嫌いのムラがあるのですが、この作品は最高でした。映像的にも物語的にも、隙のない名作です。一遍などに見られるように、この時代でも集団で歌い踊り、陶酔し熱狂していたとしても不思議ではないと思います。その点、もう少し時代背景や人物描写を丁寧にやって、史劇としての側面を強く出してもよかったと思います。ふたりが袂を分かつラストなどは、特に感動的でした。自己実現か社会的成功かという、いつの時代も避けて通れない芸能民のジレンマを突き付けながらも、そのどちらを選んでも根はつながっている、立派な闘いであることを宣言した点、普遍的なメッセージだと思います。
