けーはち

生きるのけーはちのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
3.7
余命幾許もない中、とある事業を完遂する役人の志村喬を主役に据えた黒澤明の人間ドラマ。何事も腰の重い縦割行政で事なかれ主義を旨とするマジメだが退屈な男が、癌で人生の終末を迎え、享楽に耽ってみるも最終的に人の役に立つ仕事に一意専心。そして場面は急転換し、彼の葬式へ。死者への感心を語ってみせた同僚らは、日々の仕事に忙殺され組織の論理に引き摺られ、元の木阿弥で面倒嫌いの事なかれ主義に戻るという人間の本質やら役所の根本的な体質を批判する社会派の顔も見え隠れ。生と死に真摯に向き合って静かに感情を燃やす志村喬の演技は素晴らしいが、時代柄か呟き声の音声品質が悪く聞き取りづらいし、語り口がしつこすぎるのは玉に瑕。とは言え、本作で死を覚悟した彼の見せる最後の命の輝きは余命に関係なく仕事にさほどの展望なき凡百の人間から見て気高く美しく眩しい。まあ、「釣りバカ日誌」みたいな余命の費やし方をする方が性に合っとる人間もおる訳ですが……😅