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ベル・エポックでもう一度のYOKのレビュー・感想・評価

ベル・エポックでもう一度(2019年製作の映画)
4.3
※レビューの後半ネタバレあり

久々のギンレイホール!
年パスあるのにまだ1回しか行けていないなんて···っ!そうだ、有休だ!と手前を鼓舞してやってきました。ギンレイでは同日に2作品放映しているので本日の1作目です。

「ベル・エポックでもう一度」申し訳ないことに初めて知った作品だったのでなんの前情報も無しに観に来た。フランス映画ってだけでテンション上がる。

■あらすじ
社会の変化についていけず食を失った元イラストレーターのヴィクトル。妻にも見捨てられた彼だったが、息子はそんな父親を元気づける為に「戻りたい過去を映画セットで再現する"タイムトラベルサービス"」をプレゼントする。

このあらすじ読んだだけで「泣くやつじゃん」って私の本能が吠えた。親子愛(特に父親と子ども)ものにばちくそ弱い私なので、案の定泣いた。

ただ、思った以上に息子は出てこない。ので、息子と父親のやり取りで泣いたんじゃなくてノスタルジックな雰囲気に泣かされたって感じ。あと、息子よりもヴィクトルに恩を感じている脚本家兼監督のマルゴと、その恋人で女優のアントワーヌがメインに近いなって。

ヴィクトルは懐古主義というか昔ならではを愛し、"あの頃"を愛し、古き良きを好むって感じの男性。その一方で妻のマリアンヌは退屈が嫌いで楽しいことや新しいものが好きな未来志向な女性。故に何かにつけて不満を漏らすヴィクトルにうんざりしていて浮気にも走る。

よくもまぁ25年も上手くやってきたなと思うものの、映像にはないから分からないけど、おそらくマリアンヌがヴィクトルに対して寛容で割かし我慢してきたんじゃないかなって。だからこそヴィクトルは、なんで今更俺の事追い出して別れるとか言うの?状態。

結果的にヴィクトルはタイムトラベルサービスを受け、妻と出会った日を体験することで生きる希望やら快活さを取り戻しちゃう。

なんとなく"あの頃"を懐かしんで体験してってのが、クレヨンしんちゃんのオトナ帝国っぽいものもあって、なんかそれがまたノスタルジックでみんな何かしら過去に縛られていることってあるんだろうなぁって感じたりもした。

私自身はびっくりするくらい自分の過去に対する記憶力が無く、25歳くらいまでの記憶をほぼ失っている(鳥も引くほどの鳥頭)ので、いつの時代に戻る?って言われても「???」ってなっちゃうけど、可能なら死んだ父親に沐浴してもらっていた頃に戻りたい。(ただこの場合私は誰役でどう体験をしたらいいのか···)



※この辺からラストのネタバレ含む









ラストは切なかったなぁ。
妻は思い出の場所と時でニコニコと話している一方、ヴィクトルはもう妻から気持ちが離れているように私には見えてしまった。ヴィクトルの困ったような複雑な表情がさ、なんかもうダメなんじゃないかって。マフラーも拾わなかったし。

妻も沢山我慢して夫婦続けてきたとは思うんだよね。うちの夫も否定からはいるタイプの人間だし何かにつけて文句言うしマイナス思考なので「なんなんこいつ?」ってなること多いし。追い出したシーンなんてスカッとした。でも浮気は駄目だわ。

浮気していたって事実のせいで夫にウンザリして別れたいっていうよりも、新しい男と暮らしたいって風にしか見えなかった。んで、求めていたものと違ったわー、あなたが恋しいわー、って···ううん????

あと多分、この2人やり直してもまた数ヶ月、数年したら妻の不満が爆発すると思う。ヴィクトルはヴィクトルで、もはや過去の妻ではなくアントワーヌと今の妻を比べて落胆してしまいそう。付かず離れずで息子介して生存確認し合うぐらいがちょうど良いのでは?シビアな目で見ればね。

色々揉めたけど最後はハッピーエンドです!大団円!って訳ではなく、人間らしい終わり方というか、人生って難しいわなって感じがとても好きだった。苦しくなるほど切ないけど。

ヴィクトルの最後のセリフの「お会計」がグッときた。もう"あの頃"と"アントワーヌ"とはお別れを告げて現実に戻るぞってのがあんに伝わってくるセリフだったと思う。逸材。

個人的には好きな作品だった。フランス映画らしい「ファンタジーチックなんだけど闇を孕んでる」感じや「希望あるように描いているけど現実はそう簡単にはいかんのよ」ってぶち込んでくる感じたまらん。

現実と作られた世界とが上手く絡むやり方も上手かった。混乱せずに観れるのに不思議な感じもあって、何が現実で何が偽りか教えてくれない世界観、良かった。
YOK

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