けーはち

死刑台のエレベーターのけーはちのレビュー・感想・評価

死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)
3.7
不倫相手の旦那=上司を殺した男は電源が落ちたエレベーターに閉じ込められそのまま週末を過ごす。その隙に彼の車を盗んだ若者カップルが彼の名義でとんでもない悪事をするわ、不倫相手は彼氏を探してフラフラするわ、三者三様の思惑が思わぬサスペンスフルな展開を生み出すフランス製クライム・スリラー。マイルス・デイヴィスのミュート・トランペットをメインにしたモダン・ジャズ、無軌道な若者の暴走、気怠く閉塞感のある大人の不倫ドラマ、綿密な計画がふと焦りから綻びて本当の閉塞した空間に囚われる息苦しさ、全てが終わった後も自分たちの不倫愛ゆえに逃れられぬ証拠を残していた愚かしさ……ルイ・マル監督の演出は手際良く無駄が無い(当時25歳だというから、大したもの)。戦争の英雄・元軍人の男に戦争成金な彼の上司、戦争で富と名声を得ている彼らを疎ましく思う若者の関係性からは、自由・平等・博愛の国フランスの植民地独立を阻む戦争という矛盾した行為への嫌悪、厭戦ムードもじわりと感じる。