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ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-のtonahikoのレビュー・感想・評価

3.5
ストーリーはシンプルなのだが、一回見ただけで全て理解するのは難しかった。

一人の人間を軸に、世界中で様々な人々が間接的にかかわり合っているのだが、一つ一つの事例が都度展開されていくため、オムニバス形式のような感覚を受ける。

テーマは表題にもある通り、パナマ文書流出という全世界震撼させた大事件である。その中でも、いわゆるタックスヘイブンにおける節税によって富むものと、欺かれるものを描いた要は“金融もの”である。

マネーショートもそうだが、この手の映画は全て理解しようとすると肩が凝る。映画視聴は余暇であり、エンターテイメントを求めているのであって、私にとってお勉強する時間ではない。だから、ストーリーの大筋が理解できればそれで良しとしている。

リーマンショック、パナマ文書流出とセンセーショナルな事件が起きて、一部の企業組織は糾弾され、解体したが、じゃあ世の中がそれで劇的に変わったかというと必ずしもそうではない。

おそらくこの先も、著しく富める者と、トレーハウスで生活するような低所得者のギャップは広がり続けるのが自由の国、アメリカなのだろう。

いや、こういう映画が世に出る限り、世の中は変わるのだろうか。例えばGAFAに重い課税がなされたり。

この映画のすごいところは、映画界を代表する老兵といっては失礼だが、敢えて尊敬の念を込めてそう言いたい。名優、メリル・ストリープ、ゲイリーオールドマン、アントニオバンデラスらが、長年培ってきた演技力をフルに活かして、世の中の矛盾、欺瞞、憤怒をコミカルに演じきったことだと思う。

彼らの迫真の演技は、後生のために「こんな世の中おかしいだろう」と言っているように思えた。

それは、俳優陣がオピニオンリーダー、ご意見番気取りで世の中に対して物申す様を見るよりも、余程俳優らしく、潔く、胸をすく感覚を覚えるのだった。
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