lapin2004

映画ドラえもん のび太の新恐竜のlapin2004のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

本作は生き物を野生に帰してあげる話なのだから、自然界の掟、即ち「弱肉強食」「食物連鎖」について観客の子供に考えさせる場面が欲しかった。

ミューはドラえもんが用意した生きた魚をおいしそうに何匹も食べる。白亜紀に戻ってからは現地の魚を捕まえて食べる。一方大きな翼竜に捕食されそうになった時ドラえもんたちは新恐竜を守る。スモールライトで翼竜を無力化する。その後翼竜はどうなっただろうか。「マブダチ」を食することを禁じられた肉食恐竜たちはどうなっただろうか。みんなで魚を食べてメデタシメデタシだろうか。便利な道具で現実逃避したまま話は終わる。

しまじろうやミッキーマウスなど獣人が登場する作品における「食」問題にも似た、可愛らしく擬人化された動物と可愛らしく擬人化されていない動物の命は対等ではないという描写。「(たまご探検隊は)食べちゃダメ」というセリフがあったが、では「食べていいもの」は何なのか。例えばのび太がキューに、あるいはジルがのび太に自然の摂理、食物連鎖によって成り立つ世界を語る場面とかあれば良かったんじゃないかなと思う。厳しい世界でたくましく生きて欲しいというメッセージ。

ドラえもんは小学館の図鑑でお馴染みなので、子供の科学的視点や知的好奇心を育む存在であって欲しい。これだけスケールの大きい話なんだから、頑張って空飛んで逆上がりできたみたいな部分だけ印象に残るのはもったいない。映画館からの帰途、親子であれこれ地球の歴史や生態系について会話が弾むような、そんな余韻があればよかったのだが。

周年記念作品で過去作からの引用も多い本作品。全体的に何というか大人を意識しすぎに思えた。悪役がいないのでエンタメに振るのも難しかったのかも知れない。
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