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青葉家のテーブルのYOKのレビュー・感想・評価

青葉家のテーブル(2021年製作の映画)
3.8
2週間、東京の美術系予備校に通うため優子が青葉家にやってくる所からお話はスタート。青葉家は春子と息子のリク、はるこの友人めいこと恋人のソラオという、ちょっと変わった4人家族。

スタートからおうちの雰囲気が可愛らしくて、食事もヘルシーで且つ美味しそうので目に優しい。#丁寧な暮らし、って感じ。

優子ちゃんはお母さんが有名人で、それに頼りたいくないのに頼ってしまう一面があったり、やりたいことが見つからずアレコレ手を出してみるもののしっくりこず"上書き保存"ばかりが増えている状態。なんか若々しくて可愛い。

そんな優子と予備校で出会った与田ちゃんが随分と真逆な、自分があってやりたいことが明確なタイプの子。パッと見なぜこのふたりが仲良くなれた?って感じなのに、なんかすごく合ってるのが良い。和む。

ソラオのタコスがこれでもかってくらい出てるんだけど、レパートリーに富みまくっててめちゃくちゃ美味しそう。タコス食べたことないから食べたくなった。

与田ちゃんの自分があって突き進むところ、本当に格好良いのよ。と同時に「私には美大しかない」って意固地になってるの、万が一の時にストンと何も無くなってしまいそうな怖さもあった。

対して優子は良くも悪くもやりたいことがないから美大目指してみたりバンド組んでみたりインターン行ってみたり"なんか違う"で美大目指すのやめかけてたり、とTHE人間って感じがした。優子タイプの人間って、大人子供関係なく多い気がする。

若いうちは「まだ若いんだから何とかなるよ!」って言われがちだし(でも若いのっていつまで?)、ある程度歳を重ねると「もう若くないんだから」って言われがちで(人生100年からしたらまだまだ小童だとしても)、言われなくても自分で「今更もう遅いよな」って勝手に諦めちゃうことってあるよなぁって思ったりした。

主人公の優子の最後の決断も好き。与田ちゃんみたいに「私はこれしかない」って突き進む人間もかっこよいけど、「好きなことあれもこれも全部やってみる」って優柔不断で飽きっぽいな自分を認めてあれこれやった先に、これだ!ってものが見つかるのも、またひとつの正解というか進み方な気がする。

過去に後悔を残しながらも現状に満足している大人(親2人)と、今この若さを武器にやりたいことにチャレンジする若者たちの対比が美しくて、どちらも素敵だった。人生の分岐点って天文学的数字だよね、溢れるほどにある。

人やものと出会い一夏でほんのちょっと成長する子供を描いた作品って多いけど、この作品はそれだけでなく大人の公開や満足を描くことで「こうやって大人になるんだなあ、なってきたんだな」って細やかに丁寧に描いてくれてた。

大きな感動とかは無いんだけど、満足感はあって、見たあと気持ちの良い気分になれる、そんな作品。

私もやりたいことにチャレンジしてみよ。いい大人だけど多分きっとまだ間に合う。
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