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ハロウィン THE ENDのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

ハロウィン THE END(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

キリング・スプリーと言っていい前作『ハロウィン KILLS』とは異なり、意外なほどボディカウントは少ない。「過去にトラウマを受けた人に邪悪さが芽生える様子」を軸に、物語がじっくり展開する。ローリーが体験談の著述をしている体で、邪悪さに向き合う人物としての考察を繰り広げる。ファイナルガールとして落とし前をつける回と言っていい。

過去に酷いトラウマを受けた人物として、ローリーの他にもう一人の青年コーリーが登場する(名前の響きもなんか似ているが意図的なものだろう)。

マイケル・マイヤーズの影に怯えるハドンフィールドの人々。その影響は、子どもにまで及んでいた。ハロウィンの殺人鬼の悪夢にうなされる男の子が、ベビーシッターの冴えない浪人生コーリーを過度にからかうのが本作のことの発端である。コーリーは、子どものからかいに過剰反応し、誤って死なせてしまう。この時点で「子どもは殺さない」というシリーズ最大のタブーを犯している。

それから2年後(前作『ハロウィン KILLS』の4年後という設定)。コーリーは子どもを死なせたサイコパスとしてハドンフィールドの人々から疎まれ、ローリーはローリーで、マスク男を刺激して殺戮を起こした張本人として白眼視されていた。

コーリーは地下道で生き延びていたマイケルと知り合い、なぜか殺されずに放免される。マイケルはコーリーの目から、ハロウィンの夜に男の子を死なせ、町の人々から迫害された記憶を読み取っていた。マイケルのマスクを奪い、殺人衝動に駆られるコーリー。

一方、ローリーは40年間マイケルの襲来に備えて返り討ちにしようとしていた前々作、前作とは異なり、ヘアサロンで髪を整えて自宅を購入し、孫娘のアリソンと穏やかに暮らしていた。

ハドンフィールドで起きたマイケル・マイヤーズの連続殺人がなぜか「ローリーがマスク男を刺激したから」ということになっている。考え得る最悪な状況である。いじめっ子から助けてあげたコーリーにも後に、反撃(「あんたがやる?それとも私が?」とタイヤをパンクさせる)を促したことを理由に、ダークサイドに堕ちた原因として責められる。

「強烈な殺意に反撃して生き残る」こと自体が、なぜか猛烈なバックラッシュを受ける展開。性被害やハラスメントを訴えた人が「あんたにも悪いところはあった」と二次加害を受けるのに、うんざりするほどよく似ている。

マイケルは前作では人々に悪意がある限り生存し続ける邪悪さの象徴、それ自体では生命を持たない概念として描かれていたが、本作では生身の人間となっている。彼のマスクからもそこはかとなく老いが感じられる。

『悪魔のいけにえ』のNetflix続編では、新しいファイナルガールのためにオリジナル作品のファイナルガールが犠牲となった。しかし本作で、ローリーは最後まで戦い抜く。彼女がファイナルガールとしての生を全うしたことに感銘を受けた。

戦い続けることに疲れた彼女は最後、自殺願望を明らかにし、マイケルの手で殺されようとする(その様子もまた、性被害を受けた被害者が被害状況のフラッシュバックや二次加害に耐えきれず自殺してしまうのを想起させる)。しかし間一髪、孫娘の手により救われる。女性同士の連帯が思わぬ通低音となっている。

廃車工場でマイケルをミンチにするローリー。フランチャイズとしていくらでも四匹目、五匹目のドジョウが狙えそうなのに、ここまでキッチリ落とし前をつけられると清々しい。シリーズの結末として非常に納得のいくものだった(ほんとに終わるのかどうかは知らないけれども)。
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