momo

hisのmomoのレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
4.0
同性愛が主となる物語なのかなあってあらすじを見る限り思っていたんだけど、その要素を当たり前のように日常として組み込んだ家族愛のお話だと感じた。ひとりの人間として生きていくだけでもそれなりの葛藤や苦悩がある。自分の性自認や性対象が周りとは違う 普通じゃないと自覚してからの毎日はきっと、想像しえない苦悩もあると思うし、劇中で描かれていた迅が参加していた会社の飲み会の居心地の悪さは耐え難いものを感じた。これを当人達は常日頃、視線や要らない好意を受けているんだなと心底辟易した。
貴方は普通だよって言われるのを望んでいるんじゃなくて、全てが当たり前のようにあり誰もそのことに関して無関心になる事を望んでいるんじゃないかと、私は勝手に推測してしまった。
だって、男と女の恋愛にまず性別がどうこうという意識がないから。

誰かが誰かに影響を受けるのが、人生の醍醐味って言葉があまりにも胸に刺さった。
必ずしもそれが良い方向に転ぶとは限らないけれど、影響を受けるほど相手との関係性が深く濃いものとなれるくらいその相手を受け入れた自分を、褒めたっていいのかもしれない。

渚の自分勝手に振り回されて、突然未来が見えないなんて別れを告げられて田舎に移住したのに青天の霹靂のように渚は子供を連れて現れて、具体的な理由もない なんとなく会いたくなったって言葉で迅の今までの忘れようとしてきた努力を全て泡にするようなことをして。
迅は忘れようと蓋をしただけ。開ければあの頃の記憶が舞い戻って渚を好きな気持ちやこれからの未来の隣に渚がいる、居て欲しいと願えて伝えられた。
それを緒方さんに気付かされたんだな。
誰が誰を好きになってもいい、自分の好きに生きなさい。この町は受け入れてくれるって知ってるし、その生き方の方が苦しくないよって“知ってる”んだよね。

劇中で奥さんが母親としてどうなの?みたいな場面もあって、言うことを聞いてくれない空ちゃんに対してカッとなって手を挙げてしまったところや「大事な話をしてるからあっち行ってて」という突き放し。奥さんは奥さんで、一生懸命で不器用だったんだよね 全てを完璧にこなせるのが母親なんだって、自分の母親を見ていて感じたのかな?あのカフェでの奥さんの母親の目線、あまりにも気持ちが出過ぎていて見ていてしんどかった。誰も悪くないんだよ、悪くないから辛すぎた。

「長生きせぇよ!」って、シンプルだけど一番グッとくるね。
ほんとにあの町の人は良い人ばかりで、幸せな気持ちになれたな

目に感情が出ていて、思ったことを全て口に出すのではなく一旦思慮された言葉をつむぎ合うのが好きでした。その行間でこっちの気持ちも考えも整理させてくれて良い意味で客観的にストーリーを考えられた。あんまり邦画を見ないけれど、私はこういうところが邦画のいい所だと思っていて、ずっとこういう所を無くさず続けていってほしい。

すごく好きな映画でした。
年明けてこの映画を選んで正解だったな。
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