申し訳ないけど映画としては首を捻らざるを得ない出来だった。もちろん今でなければ作られなかったし、知名度のある役者で全国公開されることの意義は大きい。しかし脚本がひどい。
全てを言葉で説明してしまうのが本当に下手。特に子役のセリフがひどい。演技もひどいもんだと思った。例えば狩猟で生計をたてている源さんが終盤で宮沢氷魚を山に誘う。そこで言うセリフがくっさいセリフでどうしようもない。シーン自体が悪いとは思わないけど、もう少し上手い言い方あっただろう。あとこれで村の人に受け入れられているであろうことは分かるんだから、葬儀での演説はマジでいらない。
いつもは今泉監督そんなことないのにやはり他人の脚本を持て余してしまったのか、考えられないほどダメな映画になってしまっていると思った。
今泉監督は会話の人ではあるんだけど、セリフ回りの妙というか独特のおもしろさがある人で、言葉で言ってることと行動が少しズレてたり、言葉と表情が合ってなかったりする気持ち悪さが映画を面白くしてたんだけど、この作品では自分の脚本じゃないのでたぶん合わなかったんだと思う。セリフだけが上滑りしているように思えた。
ただ、松本穂香、松本若菜の松本コンビが素晴らしい。演技もそうだし、演出もこの二人の周りになるとすごい上手くなる。たぶん今泉監督がやりたいのは『エデンより彼方に』なのかなーと思った。つまり旦那に裏切られた妻の方なのかなと。あと親権をめぐる争いという部分が意外と大きくて『マリッジ・ストーリー』も連想した。
決して悪い作品ではないけど、『ブロークバックマウンテン』『キャロル』『君の名前で僕を呼んで』などの傑作がアメリカで生まれてしまっている今、それらと比べてしまうと分が悪い。