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劇場版 SHIROBAKOのohassyのレビュー・感想・評価

劇場版 SHIROBAKO(2020年製作の映画)
3.5
映画「劇場版 SHIROBAKO」

緊急事態宣言が出る少し前、滑り込みで鑑賞したのが本作。
すでにテレワークが始まり、不慣れな環境で生活を送っていた中でなんとなく落ち着きどころが掴めずダメージを受けていた僕は、無意識に元気の素になるような物を求めていたのだと思う。

本作はテレビシリーズから続く作品で、このテレビシリーズはほんとうに良くできた面白いアニメ作品だ。
隅っことは言えアニメ業界に身をおきながらアニメはそれほど熱心に見ないのだけれど(申し訳ありません)、それでもここ数年で本気で楽しんだ作品はいくつかある。
その中の1本がテレビシリーズ「SHIROBAKO」だった。
ちなみにその他で言うと「日常」などですが、ほんとうに面白くておうち時間に最適。
どちらのシリーズもNetflixやアマプラで見られるのでぜひ。

シロバコというのは、ひとつの作品が出来上がったときに受け取る、素っ気ない白いケースに入ったVHSのことで、今はデータなどになったけれど呼び名が残っている。
多くのスタッフが長い年月をかけて作り上げた、いわば結晶のようなものだ。
そのシロバコを作り上げるまでのドラマを、学生時代からアニメ作りの仲間として切磋琢磨し夢を語り合い、新社会人としてそれぞれの世界に飛び込んだ女の子たちの奮闘を通して描くのが本作だ。

アニメ業界を知る者にとっては「そんなこたーない」などと思う部分も多々あるだろうけれど、ここには漠然とではあるが「働くとは何か?」という問いに対しての解答があるように思う。
もちろんそれを「絵空事だ」「綺麗事だ」と言ってしまうこともできる。
確かにそうだろう、しかし一方では、こういう世界を求める気持ちも、少なからず誰もが持ち合わせているのではないだろうか?
僕は、持っている。
挫けそうになりながらも前向きに直向きに進む彼女たちの姿には、素直に元気をもらえる。
そして、そりゃ泣くよ!と言いたくなるずるい展開も待っている。
青春モノアニメとして最高峰作品のひとつだろう。
クリエイティブである必要は無くて、力を合わせて成し遂げた後の打ち上げって、僕はほんとうに楽しいと思うんだ。

本作はテレビシリーズから少し経って、それぞれが新人から一人前の社会人になった世界での物語。
「前作がテレビシリーズの制作を描くテレビシリーズ」だったのに対して、「劇場版制作を描く劇場版」という仕立てで、映画としてのまとまりを保っている。
同時に社会人としてのそれぞれの壁を描くことで、あらたな仕事への向き合い方も伝えようとする。
ガルパンしかり、水島監督の演出力・ドラマ力はこれからも注目だ。
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