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コリーニ事件のこどものレビュー・感想・評価

コリーニ事件(2019年製作の映画)
4.7
「求めるのは正義だけだ」

時間を忘れさせるほど軽快な展開するのに、その実は骨太な法廷サスペンス。
とてもスムースなのに超濃厚、という稀有な映画体験ができた。

ひとつの殺人事件を皮切りに、ドイツの歴史を忌まわしき第二次世界大戦まで遡り、当時の司法を戦争絡みの時代背景と紐づけて白日の元に晒していく。

「法」とは決して正義の結晶体ではない。
法治国家であるが故に、腐った悪意によって産み落とされた悪法に苦しめられた人々がいた。法を後ろ盾に、為政者は自らの行いを正当化する。それはきっと「歪な正義」によって塗り固められているだろう。

私は、コリーニの人生は、決して「歪な正義」なんてものではなかったと信じたい。
彼の道は正道だっただろう。
でも、彼の人生が100パーセント正しかったと決めてしまったとしたら、それがまた別の正義を生んでしまう。
だとしたら、人間には、すぐに何かに縋ってしまう弱い人間には、「正義」だとか「信念」なんてものは要らないんじゃないかと頭をよぎる。

それでも、他の誰でもない、自分だけが信じられる何かを秘めておくことは、その人をその人たらしめる、ヒトをヒトたらしめる大切なことなのだと思う。
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