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大奥のtakのレビュー・感想・評価

大奥(2006年製作の映画)
3.0
フジテレビのテレビシリーズ「大奥」(2003〜)はまったく見ていなかった。しかし、その劇場版が「犬神家の一族」リメイクと二本立て!という誘惑で映画館へ。女性のドロドロした人間関係が描かれている訳だが、だいたいいびられる女性を見るのって好きじゃないが、思ってたよりも面白かった。それは演じている人々が役柄を楽しんでいると感じられたから。

感情や欲望にストレートに生きてる役柄の人々が、特に楽しそうに演じている。つまり「いびってる側」。高島礼子なんてチオビタのCM(当時)以上に生き生きしてるし、松下由樹や浅野ゆう子も然り。一方で「いびられる側」の、不安そうな居心地の悪さも”らしい”キャスティングでわかりやすい。井川遙はまさにイメージ通りで、茶会で苦いのを飲まされたり、歌会で悪口言われたりと踏んだり蹴ったり。麻生祐未の「お暇をください」って表情は真に迫ってた。

仲間由紀恵はそうしたお局女優たちの中で頑張ってる。実は一番品があるんじゃないの?とすら思った。花火を見て涙するところ、世間離れした絵島の悲しさがにじむ。女優たちの熱演の中、僕が一番すげえ!と思えたのは杉田かおるだった。高島礼子扮する天英院派の一人。冷静に振る舞いながらも、嫉妬の情から芝居小屋に火を放つ場面の何とも言えない表情が素晴らしい。やっぱりこの人は巧いよね。「私で試してみるか?」と男に迫りながらも、「気が変わりました」と身体を離す場面。いいです。

この頃の西島秀俊って自信なさそうな男の役が多いと感じていたのだが、この映画の生島新五郎役はなかなか。「私を買いたいですか?」って、男娼まがいの歌舞伎役者。あの時代の役者って、スポンサーを得る為に身体売ってたりもあったんだろう。しっかし、絵島への恋心が丁寧に描かれているとは思えない。処刑される場面の表情を見るまで、僕は彼の本当の恋心を信じられなかった。

それにしても、東映のお正月映画で「大奥」!ときたら、どうしてもお色気路線を期待してしまう世代なもので、そういう意味ではちょっと物足りなかったが。

(当時のレビューに一部加筆)
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