KITAYUMASSACRE

羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来のKITAYUMASSACREのレビュー・感想・評価

4.8
日本のバトル漫画やジブリ作品、またアメコミの影響(特にXメン)を強く感じるが正直それらの要素をとてつもない情熱と努力で取り入れた結果、オリジナルをはるかに超える凄まじいものが出来上がってしまったという感じがする。
ジャンプ漫画にはジャンキーな魅力があると思う(と言ってもめちゃくちゃジャンプ漫画にハマったことはないので印象に過ぎませんが)。海外ドラマや、かつての冒険活劇の手法にも似ていて、とにかくクリフハンガーで来週もジャンプを買わせる努力を延々と続けなければいけない。もちろんそれはそれで魅力があるし、その手法で作られた漫画が世界中に影響を与えたことは事実だ。
本作「ロシャオヘイ戦記」もジャンプ漫画の影響を多々受けているだろう。しかしながら、同じジャンクフードにも関わらず、こちらはとてつもなく丁寧に細部まで作られているのだ。ジャンプ漫画やそのアニメ作品が下手だと言っているのではない。この作品の丁寧さが異常すぎるのだ。まるで世界一の高級レストランのシェフが努力を結集して作ったたこ焼きみたいなもんである。さらに驚くのは、その世界一の高級レストランのシェフたちはこのアニメ以前には名前が知られていなかったということである。
例えば街が半壊するような大味なアクションシーンにおいてもこの作品にはシワになった襟を正すという細かい描写がいちいち挟み込まれる。それによってキャラクターの心情も描写される。街が壊れる様子も、ただ壊されるのではなく一つ一つ丁寧に壊される物体が描かれ、壊れるものの音がする。日本のアニメ作品では見たことがないような細やかさである。というかハリウッド映画でもこの作品ほど細かくはないだろう。
なぜこの作品がこんなに良くできているのだろうかと考えた時、やはりこの作品を作っているスタッフたちは、純粋にアニメーションを楽しんでいるのだと思う。彼らは技術も物凄いが、感情でアニメーションを描いている。例えば主人公シャオヘイの猫の姿の動作一つ一つに心の底から可愛さを感じる。これは描いている人も可愛いと思っていなければ絶対に描けない。とにかくこの作品のスタッフは自分たちが生み出したキャラクターへの愛が半端ではない。商売だからではなく、ただキャラクターが動き話し、そして人格を持つことに対する喜びを感じているんだと思う。
日本のアニメ映画においても、このクオリティの作品が年に何本か見れるといいのになぁと思う。続編が今から超楽しみ。
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