こーじ

夏時間のこーじのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
4.8
2021年の公開時に見た時はそんなにおもしろいとは思えなかったのだけれど、その後ずーっとこの映画が頭に残っていて再視聴。
素晴らしい、素晴らしすぎる!!

ついこの間、スチュアートダイベックの短編集、シカゴ育ちの中の冬のショパンを読んだ。
その事柄は確実に知っているし目には映っているものの、細かく認識しようとすればするほど大事なものが剥がれていき、結局なんのこっちゃ分からなくなる、そんな複雑な感情が文字の隙間からじわじわと滲み出てくる、つい唸ってしまう体験をしたのだけれど、この映画もそれと似たような気持ちになった。

時間というものはすごいなぁと日々感じていて、どうしようもないことも時間が解決してくれるとひそかに信頼をしているのだけど、時に変わって欲しくないことも変えてしまったり、手を出すことが許されないほど完璧に進んで行ってしまう無常さに立ち尽くすしかない時もある。解決してほしいことに限って結局あまり解決してくれないじゃん!とあとからがっかりしたりもするのだけれど。
未来と過去をいったりきたりしながら現在を認識しようとしていて、その全体の中で生きてる。

何で見たか忘れたけど、
悲しみとは使い古した喜びである。
という言葉を思い出した。

おじいちゃんが音楽を聴きながらしみじみしているシーンでは自分のおばあちゃんを思い出した。
おばあちゃんは音楽を自分から聞いたり音楽の話をしたりする人ではなかったのだけれど、テレビで美空ひばりの歌が流れた時だけ嬉しそうに昔の音楽エピソードをはなしてくれたのを思い出した。おばあちゃんに認知症がきて心ここに在らずに見えていたときも、美空ひばりがかかった時は見た目は変わらなかったにしても、おばあちゃんが感じていることが透けて見えるような気もした。
音楽っていいよね…

夏時間、時間と対面するいい映画だった。
とにかくすべてのカットが美しいですね……
めちゃくちゃ好きな映画!
こーじ

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