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大コメ騒動のohassyのレビュー・感想・評価

大コメ騒動(2019年製作の映画)
3.0
富山市の仕事をさせていただいているご縁で、一足お先に試写を拝見。
「釣りバカシリーズ」や「超高速!参勤交代」などの王道コメディから「空飛ぶタイヤ」などの社会派作品まで幅広くこなす、富山出身の本木監督作品。
個人的には「鴨川ホルモー」が大好きです、ゲレンチョリー!

仕事の都合で、幸運にも事前に台本も拝見した上で鑑賞することができたのだけれど、映画のシナリオというのはそれはもうしっかりと「ト書き」が書かれている。
当たり前のことだけれど、普段僕が書いてもらったり書いたりしている、短い尺の会話劇のシナリオとは、シナリオの時点ですでに作り込みが違う。
もちろんそうしなければ撮影の準備ができないし、多くのスタッフのイメージを統一することもできないので当然なのだけれど、このシナリオ作業を想像するだけで気が遠くなってしまう。
あらためてシナリオというのは映画の設計図だなと感心しきりだ(している場合ではない)。

本作は予告などを観る限りは「超高速!参勤交代」方向のコメディのイメージが強いと思うのだけれど、もちろんそういう側面もあるが、実のところかなり切り込んだ社会派の一面も強い。
江戸時代が終わって民主主義と自由経済が始まりすべての人が平等になったと思っていたが、実は格差は開く一方で、さらには男女の差別も当然のように残ってる。

本作にはそんな時代背景が強く表現されていて、実は今まさに我々の前に立ちはだかっている状況を色濃く反映する結果にもなっている。
そういう意味ではエンタメと社会派がmixされた、本木監督のキャリアの集大成と言えるかもしれない。
単館系やアート系を除いて、見えざる貧困問題や差別に立ち向かう女性たちのエンパワーメントをここまではっきり描いた邦画は、案外少ないのでは?

弱い立場が当たり前だった女性たちが、思考停止しないでできることをやろうと決意したところから始まった米騒動は、教科書では一言触れる程度の扱いだったと思うけれど、背景にあるこういうストーリーをこそを伝えるべきだろう。

当時は「米価の高騰」というきっかけがあったことで庶民の声が大きくなり、結果的に時の政権が倒れるまでの「革命」が成されたわけだが、今の我々はどうだろう?
何かわかりやすいきっかけが、やっぱり必要だろうか?
もしかしたらこの疫病がもたらす抑圧が、新たな革命の引き金になるのかもしれないな。

主演の井上真央さん、とてもキレイで汚くて、姿勢も目つきも悪くて、良い役作りをしている。
その他脇を固めるベテラン勢も富山出身勢を中心に見た目の作り込みから激しくて、中でも室井滋さんは相当楽しんでいたと思う。

ところでたまに富山弁解説の字幕が出るのだけれど、それでも分からないところだらけだったからもうちょっと出して欲しかったな。
あれって富山の人だったら分かるがや?
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