akihiko810

ミッドナイトスワンのakihiko810のレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.4
草彅剛主演

故郷を離れ、新宿のショーパブのステージに立ち、ひたむきに生きるトランスジェンダー凪沙。
ある日、養育費を目当てに、育児放棄にあっていた少女・一果を預かることに。常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。
理解しあえるはずもない二人が出会った時、かつてなかった感情が芽生え始める。

真に孤独な者同士の、心の共鳴が描かれていて、とてもよかった。
本作の批判に、「2020年にもなって、トランスジェンダーを描くのに、いまだに<オカマバー(夜職)>とか、日本のLGBT観は十年遅れてる」というのをみかけたのだが、それはその通り(日本のLGBT観は十年遅れてる)だと思う。
そして本作の監督が「本作は<社会派>映画と言われますが、社会派映画ではないです」となにかの記事で語っていたが、その意図は本作を見て理解できた。
これはLGBTの現状やあり方(こうあるべき)を描く作品ではなく、あくまで「主人公(凪沙)の生き様」を捉えた作品だからだ。
生きづらい生を「それでも生きる」ことの困難さ、悲しさと、孤独。そんな者同士がときたまもたらす、魂が共鳴する瞬間を描いた作品なのだ。
なので、本作を見て「これだから日本のLGBT映画は~」と語るのは、少しずれているように思える。
本作はLGBT映画、というよりも、より広く「孤独な者が<それでも>生きる」映画、というより普遍的な捉え方をした方がいいと思う。

役者は草彅剛が巧いのはもちろんだが、一果役の子(服部樹咲)がとてもうまかった。こんなに若くて可愛くて巧い子役がたくさんいるのだから、日本映画の未来に期待が持てる。
akihiko810

akihiko810