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エルヴィスのHSMTのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
4.5
天才が欲した何かと金の亡者の欲の尽きなさを同時に目の当たりにできる作品。

絢爛でギラついた音楽と映像の調和を作り上げたら右に出る者がいないバズ・ラーマンによるエルヴィス・プレスリーの生涯。
全てがエネルギッシュな前半は彼がのし上がり、社会現象として産まれるまでを、
低調で浮き沈みが激しく孤独な後半は重苦しく、過去を清算できず足を取られていく様は彼の生き様そのものだった。
特に彼が原風景であり夢のスタートだった瞬間に重なる頂点の場面は、秘密裏に薄汚く邪悪な取り決めが進行している。
ミュージシャン映画ならもっともブチ上がる夢の頂点と同時に転落を描くあたり、大佐曰くの「観てはいけないものかもしれないと戸惑うもの」を悪い形で観客に叩きつけてくる。
エルヴィス・プレスリーのカリスマ性と悲劇を際立たせてきた演出だと唸らせてくれた。

華麗なるギャツビーあたりから音楽で特権階級に胡座をかく白人男性や家長性の脆弱さを刺していた監督でしたが、真っ向からそこを滑稽で悪しき存在として殴りつつも、
メイン2人がそれぞれに欲したものはそこには存在しないとしているところも、アメリカンドリームという感じで非常に良かったです。
アメリカが大好きな父というものが、実は機能していない所も包み隠してなかったですし。

エンドロールの彩飾もずーっと観ていられる、観ていたい派手さで最高でした。
品があるかというより、ギラついて誰もが憧れてしまうような輝きがあった。
最後までショーとして仕上げてくれてありがとう。
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