MasaichiYaguchi

海辺の途中のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

海辺の途中(2019年製作の映画)
3.7
「MOOSIC LAB2019」で観客賞、男優賞、女優賞の三冠に輝いた外山文治監督のこの短編では、観る者に「自分は何のために生まれたのか」という根源的な問い掛けをしてくる。
主人公の星野孝太郎は無精子症の為に子供が出来ず、妻の聡子と離婚した後は函館で写真館を営む父親とふたりで暮らしている。
そんな彼は、再婚相手との間に子供を作った聡子の幸せな日常を綴るインスタグラムを覗き見ながら過ごし、投稿される子供の写真を見る度に傷つくが、無視することも出来ずに自暴自棄になったいく。
やがて夜の街でデリヘル嬢の舞子と出逢い、刹那の関係を深めていくようになる。
「家庭円満」とは、家族の生活の調和がとれていて穏やかなことだと思うが、「子はかすがい」の言葉通りに、子供の存在が夫婦の縁を保ってくれるということはあると思う。
だからといって、子供のいない夫婦は仲が悪いということはないと思う。
私の身近にも、不妊治療をしても子供が出来ずに諦めたが、その挫折を乗り越えたことで、より親密になった夫婦もいる。
夫婦として、人としての幸せとは、そして自分とは如何にあるべきかを、本作は繊細な語り口で描いていく。