りょう

バビロンのりょうのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.4
 完全に好みの問題ですが、前半で延々と展開される狂気と喧騒がムリでした。やりたいことはわかるし、ネリーの破天荒な性格などともマッチしているので、映像や演出のクオリティとしては否定しませんが…。さすがに3時間ぶっとおしの一本調子ではありませんが、全体の雰囲気はそのままに、まとまりのない印象で、群像劇としても中途半端な展開です。
 デイミアン・チャゼル監督の映画愛が表現されていたのか、「2001年宇宙の旅」「ターミネーター2」「マトリックス」なんかのSF映画のシーンが羅列されるエンディングは、それまでの展開からすると唐突で、あまり脈絡も理解できずに不自然なだけでした。
 ただ、中盤で映画業界がサイレントからトーキーになって、撮影スタジオが“Silence”で統率されたシーンがハイライトでした。前半のわちゃわちゃ感は、この静寂を強調するためだったのかもしれません。ネリーが大学生の役柄を演じるシーンがテイク7あたりまで凡ミスのNGとなるくだりは、まるでコントのようで爆笑ものでした。当時はアフレコなんかの技術もなかったのでしょう。アフリカ系トランぺッターのシドニーが“白すぎる”という理由でメイクを強要される場面も印象的でした。
 ブラッド・ピットとマーゴット・ロビーの共演で過去の映画業界を描いた作品として、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」をイメージしましたが、この作品をクエンティン・タランティーノ監督が演出すれば、もっといい印象だったかもしれません。
 ただ、ジャズを中心にした音楽は抜群にうまく使用されていて、メインテーマのバリトン・サックスがとてもいいアクセントになっています。
りょう

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