ぬ

ハニーランド 永遠の谷のぬのレビュー・感想・評価

ハニーランド 永遠の谷(2019年製作の映画)
4.8
凄まじいドキュメンタリーでめちゃめちゃよかった…!
ミツバチを繁殖させるのではなく、野生のミツバチからハチミツを頂戴するというスタイルをとる世界最後の養蜂家ハティツェ・ムラトヴァに密着したドキュメンタリー。
養蜂に興味があるので観てみたのだけど、養蜂というか、ハティツェ・ムラトヴァの自然そのものに対する接し方が素晴らしくて心動かされた。

高齢で身体に麻痺のある母と非常に慎ましい二人暮らしを送りながら、欲張ることはなく、「ハチミツは自分たちに半分、もう半分はミツバチたちに」と、あくまで「ミツバチたちが作った大切なハチミツを分けてもらう」という精神で養蜂をしているところが素敵だった。
しかし、労働量に対して生活が慎ましすぎてすごくつらかった。
溺れかけるミツバチを葉ですくってあげたり、なかなか身動き取れない亀を助けてあげたり、ハティツェの些細な行動から彼女の優しさがすごく伝わってきて心温まった…
素手でミツバチの巣に手を入れても刺されることもなくて、なんだかミツバチもハティツェのことを信頼しているような感じがした。
つらいことがあっても、悲しみに浸る間もなく自然の厳しさが押し寄せてくる感じもなんかもうやるせない…幸せになってほしい…

途中からやってきたトルコ人家族の両親、子どもの扱いとか、計画性のなさとか、親切にしてくれるハティツェのアドバイス無視するとか、そういう部分はありえねぇ…と思うものの、あの両親も同じように親から育てられたんだろうなとか、子どもを学校へ行かせるのに必死なんだろうなとか、生まれ育った環境とか考えると、なんともホントに不甲斐ない。
実際、無茶な注文してきたオジサンのように、足元見られて搾取される側の人間であることはあきらかで、その構造自体が元凶なんだよな…
だからって、ハティツェが迷惑を被る筋合いはないからムカつくけどね。
ハティツェを慕ってた男の子、あのまま育ってほしい…
この家族も幸せになってほしいわ…

食べ物だけに限らずすべてについて言えるけど、消費者として本当の意味でフェアトレードの商品を買い支えなければ未来はないな…
ハティツェのような人たちがこの世界にはいて、もしかしたら自分が日常で使ったり食べたりするものの作り手なのかもしれないという想像力を持って生活したい。
何より、ハティツェという人とその生活を垣間見れて、このドキュメンタリーを見てよかった。


【※映画の内容には触れないけど、ハティツェのその後につい触れるので、人によってはネタバレだと感じるかも】

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ドキュメンタリー後のハティツェの生活が気になって気になって夜も眠れなくなりそうだったので調べてみたところ、この映画が成功を収めたことにより、ドキュメンタリーの舞台の地域へ通える住居を提供されたそうです。安心した!
ぬ