もものけ

ファヒム パリが見た奇跡のもものけのネタバレレビュー・内容・結末

ファヒム パリが見た奇跡(2019年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

才能は万国共通の生きる力でも、開花させるチャンスは、万国共通ではないのよねぇ〜……。

父親仕込のチェスに才能を持ち、負けん気の強さで攻めのチェスをするファヒムは、ある日誘拐されそうになる。
政情不安なバングラデシュで、消防士の父親は、息子がチェスチャンピオンの有名人であり反政府活動をして当局に目を付けられたことを危惧し、家族を守る為に難民として二人でフランスへ移住する。
しかし、難民申請は進まず滞在するホテルを追い出されホームレスになる二人は、難民ネットワークの助けを借り住まいを見つけ、あるチェスクラブへ通い始める。
チェスクラブの講師は、不法滞在者であるファヒムの才能に、諦めかけたチャンピオンの夢を思い出すのだった…。


感想。
天才肌のサクセスストーリーではなく、境遇をバネに成功を手にする少年の伝記をメインに、社会情勢や社会問題を取り入れたドラマですが、悲惨な現実ばかりを描かず、ややコミカルに演出しているので、安心して鑑賞できる良作でした。

見た目の良い子役をキャスティングして、感度を大袈裟に押し付ける表現ではなく、個性的な見た目の愛くるしい演技で、キッズムービーとしながら面白可笑しく、たまにシリアスに演出していて、楽しいです。

周りに良い人ばかりで、リアリズムには欠けますが、逆境からチェスのように勝利する少年を主体としているので、目を覆うシーンなどショッキングな場面もなく描ききるので、家族でも安心して鑑賞できます。

最初に民主主義革命を起こしたフランスを背景に、移民問題による人権を問題提起するテーマ性で終わるラストシーンには、グッとくるものがありました。

根底にある人権のテーマではあるものの、チェス大会で優勝する少年をコミカルに演出するドラマなので、それほど大きく心揺さぶられる作品ではなかったですが、それなりに楽しめたので、3点を付けさせていただきました。

バングラデシュの社会情勢を知らないと、余計にその境遇が分からずに、やや置いてけぼりな感動になりがちなので、オープニングタイトルの暴動シーンのみではなく、もう少し父親の背景を描きこめば、また違った良さが出たように感じました。
もものけ

もものけ