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ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

1.0
ウルグアイのホセ・ムヒカは地球サミット(リオ会議 2012年)のスピーチで一躍有名になった。資産を持たず、世界で一番貧しい大統領として知られている。

そのドキュメンタリー映画を2本続けて観た。もう一本は、クストリッツア監督の作品(2018年)。比較した。

正直な感想。私はこのドキュメンタリーが意図したプロパガンダにみえた。

映画の始まりからフジテレビの偶然を装ったヤラセにみえたのは、地球の裏側の大統領にアポ無し突撃取材はあり得ない。第一失礼だ。その理由の説明なくして、若いフジテレビ職員が感動して何度も取材に出かけ、来日を企画し、最終的にはメディアミックスである。なんじゃこりゃである。ムヒカ元大統領の商品化である。

アメリカ的資本主義に抵抗し続けたムヒカを日本企業の資本力で「菊の花」「日本人の特異性」「若者のための未来」のキーワードとイメージを重ね合わせて、ムヒカに「愛国心」を語らせているからだ。感情を揺さぶるスピーチは感動的だ。いわゆるアジテーションをしてきた者らしい、心に触れるわかりやすい言葉。感動の物語だ。日本に招待し、アイドルのように黄色い声で迎えられ、欧米化した日本を実際に知り、日本人には欧米の失敗の真似をせず、「日本人の特異性」「日本の文化の特異性」を伸ばし大切にしてほしいというメッセージが残された。

ムヒカ元大統領を否定しているわけでは全くない。利用されている感でいっぱいで残念な気持ちになった。

クストリッツァ監督は賛否両論から生々しくムヒカを裸にしたが、こちらはムヒカが若者のアイドルのように崇められ、批評不要な感動が作られた。クストリッツァのように、一政治家と渡りあえる貫禄のある人が、しっかりと思想や人間を見るのではなかった。

日本人へ、と題されているように、特注である。

政治家の言葉は言葉だけ切り取ってはいけないのを誰もが知っているはず。

ドキュメンタリーと名がついても、もちろん映画は切り取られて編集された物語であり、編集側の意図がある。とくにエンターテイメントの作り方が上手い「ドキュメンタリー風」の製作物には注意したいと思った。感動を求めて探している場合はなおさらである。
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