このレビューはネタバレを含みます
素晴らしい!
ギレルモ・デル・トロといえば現実と幻想が行き来する大人のための童話が多かったけれど、これは真っ向から現実と詐欺を組み合わせて、不可思議要素を排除した故に入りやすい。
シェイプ・オブ・ウォーターでもパンズ・ラビリンスでも、まあね、SFだしね、なんでもありだよね、と受け流せるけれど、この映画にはそういう逃げ道がない。
それでいて、この惹きつけ方。アングルもカットものめり込ませる手法で、もう夢中である。最後のカット、なんという底意地の悪さ! 充分に乾笑いさせてもまだ終わらない、まだ終わらない、まだ終わらせない。醜悪なエンディングをここまで引っ張る性格の悪さってばよ!
最初は流れものでカッコつけで寡黙な男をあそこまで追い詰めて、獣人にさせる、クゥー、やることが曲がってやがる。
1940年代の粋なアメリカに似合う舞台と、好演する役者陣、もちろんブラッドリー・クーパーも良かったけど、ケイト・ブランシェットの怪演である。何年生きているか分からないような妖艶で不気味な顔。美人とはいえないが、あの眼の怪しさよ。
なんとまあ全てがうまく組み合わさった映画だろうか。それを統べた監督の手腕が流石である。