KKMX

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だったのKKMXのレビュー・感想・評価

3.9
 世界で一番カッコいい名前だと思っているバンド『ザ・バンド』のギタリスト、ロビー・ロバートソン視点のドキュメンタリー。彼の自伝がベースになっているためフラットなバンド・ドキュメンタリーではないです。


 ロビー・ロバートソン77歳とのことですが、とにかく若々しい!50代といっても通用するルックスでした(とはいえヅラ疑惑あり)。シャキッとしていていかにも健康的な雰囲気でビックリしました。ヨボヨボ感ゼロ。

 ドキュメンタリーを観ていると、とにかくこの男真面目です。一生懸命練習して努力して、コツコツ曲作りして、酒もドラッグもやらないでワイフと子どもを大切にして…とても60〜70年代のロッカーとは思えないセルフコントロールぶり!やはり若い頃からヘルシーな習慣で生きていると老けずに健康なのかもしれないです。
 一方で、ロックが持つ衝動性や刹那性とは無縁です。ザ・バンドが持つルーツミュージック的な老成感の背景が見えたような気がしましたね。きっとロビーはサラリーマンとしても優秀な管理職になったと思います。こんなちゃんとしたロッカーいたんだ!裕也とは絶対気が合わないネ!
(真面目ロッカーといえば我らが聖チャーリーですが、バンドのメインソングライターでフロントマンでここまで真面目な人はあんまりいなさそう)

 真面目男ロビーは、他人の不真面目が許せないタチのようです。
 15くらいから一緒にバンドを組んで切磋琢磨してきたドラマーのリヴォン・ヘルムがヘロインにハマると、関係に溝ができます。「ガラスのように一度壊れると元に戻らない」と悲しげに語るロビー。ビッグ・ピンクというウッドストックのスタジオ兼住宅で創作の日々を過ごした相手がヘロインでヘロヘロになるのは見るに耐えないし、真面目人間故に想いが強く許せないのか…としんみりしていたら終盤でリヴォンと印税でモメていたことが判明!なんだカネじゃねーか!リヴォンが困窮して印税おくれと言ってきたのに突っぱねたロビー。事情はいろいろあるかもしれんが器ちっちゃいな。桑田佳祐はサザンのメンバーで印税分けているらしいぞ。やはり続くバンドはカネ問題がクリアだ。
 とは言え、リヴォンとは彼の死の直前に和解したっぽいから、それは良かったな〜と思いました。仲が険悪のまま全滅したラモーン一家に比べれば幸せな関係性です!


 ザ・バンドの全員が腕利きで職人集団っぽい雰囲気は素敵だし、上述したビッグ・ピンクでの日々は本当にかけがえのない素晴らしい日々だったと思います。ロビー自身、熱いし真面目だし、魅力的なミュージシャンだと感じます。が、やはりロビー史観だとなんとなく腑に落ちきらない印象です。魂の兄弟だったリヴォンとの思い出を美化している一方で、やっぱり兄弟仲が裂けたのは現実で最もポピュラーな理由であるカネ問題か…と思わざるを得なかったからです。


 正直、ロビー・ロバートソンがちゃんとした人で優秀なミュージシャンなのはわかりました。しかし、自分にとって心惹かれるロッカーではなかった。
 とはいえ、観てよかったので、これからラストワルツを観ることにします。

 あと、まだ存命のガース・ハドソンの現在の姿がなかったのは残念。パンフによればインタビュー撮ったもののジジイになりすぎて映像に耐えないと判断してカットしたとのこと!むしろ観たいわ!元々ガースは若い頃からジジイ感たっぷりだからいいんじゃない?
 ちなみに俺はガースが一番好きですね。


【追記】
 2023年8月、ロビーが80歳で亡くなりました。カナダ人の男性平均寿命が80とのことで、ちょうど平均的な寿命でした。ヘルシーだったとはいえ、60年代のロックンロール・ライフのど真ん中にいてこの寿命は長生きと言えそうです。意外にも、ヨボヨボで出番をカットされたガース先生なザ・バンドで最も長生きのメンバーとなりました。
KKMX

KKMX