Stroszek

ドント・ルック・アップのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

現実に基づく風刺映画。

女性の描き方に問題がある、というより、「現実の過酷さが女性をルッキズムの権化にしてしまってますよね?」という皮肉か。知性を感じさせる女優の代表格であるケイト・ブランシェットが、ボトックス注射をしたような頬と唇で、胸の強調された服を着てテレビ番組の司会者をしている(厚化粧すぎてはじめ誰だか分からなかった)。

大学院生のケイトはヒステリックな女性として排斥される。必死で声を上げて迫り来る危機を訴えた彼女をメディアは疎ましがる。

科学者の言うことを聞かない、身内を補佐官に縁故採用するオーリアン大統領は明らかにトランプ大統領がモデルなのに、演じるのはメリル・ストリープだ。彼女は本質的な問題に対処するのを避け、支持率やパフォーマンスだけを気にする。

彼女の補佐官である息子は、「クール・リッチ」である彼ら+彼らの味方である「労働者」対「奴ら」(リベラルな知識人)という対立構造を作り上げようとする。これは選挙でヒラリーに対抗するためにトランプが取った戦略と同じである。

「科学者の声を聞け」とアリアナ・グランデ演じる歌姫ビーナが歌うように、「政府が科学者の声を聞かなくなったらどうなるか」がテーマだ。Twitter上でトランプは当時対立候補だったバイデンを「彼は科学者に耳を傾ける」と攻撃し、バイデンは「…え…そうだね」と当然の答えをした。作中の大統領が金儲けの助けになる科学者の声にしか反応しないのは、あからさまなトランプへの風刺だ。

「その研究、査読(peer review)は受けたの?」隕石を用いた金儲け研究に引き込まれそうになったミンディ博士に対し、ケイトとオグルソープは何度も確かめる。研究における査読の重要さをコメディ映画から教えてもらうとは思わなかった。

レオナルド・ディカプリオが二十歳くらいの息子二人がいる父親役をしており、二十五歳までのモデルとばかり付き合ってないで家庭を持ってたらこんな感じだったのかな、と思わされた。声が若くてまだ四十歳くらいかと思ってたがもう四十七歳である。私より年下かと思っていたので驚いた。そういう意味では、レオ自身にも若干風刺は向けられているのかもしれない。それをドーンと受け止める彼はやはり大物である。
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