阿寒湖アイヌコタン(集落)を舞台に、アイヌの少年が自身の文化に触れ、精神的に成長する話。
「アイヌモシリ」とはアイヌ語で「人間の大地」という意味らしい。
終わり方が少し唐突で、若干不思議な気持ちになったものの、ドキュメンタリーのようなリアルさを持つ良作だった。
本当に地元の人が出ているのも良い。
各キャラクターの心情描写も繊細だった。
アイヌと一括りに言っても、年代や立場、考え方によって、感じる居心地の悪さが違うことがよく伝わってくる。
アイヌ文化が観光として消費され、自身もそこで生計を立てる一方、自分そのものが「みられる」対象になる居心地の悪さを感じる人。
和人とは死生観や精神性がまるっきり異なるにも関わらず、文化・慣習を合わせることが期待され、アイヌのアイデンティティとの間で居心地の悪さを感じる人。
そして、そのような大人たちの背中を見て、自分のアイヌとしてのアイデンティティを受け入れることに躊躇する思春期の主人公。
少年がアイデンティティに目覚めるという成長物語であり、アイヌの人の葛藤を描いた物語でもあった。
2019年に「アイヌ施策推進法」が成立し、法律として初めてアイヌが「先住民族」だと認定されたが、「民族の権利」は保障されていないとのこと。
同化政策によって、言語や慣習、居住地域を奪われ、生活基盤を失わせたことに対する謝罪や保障はないらしい。
2020年に政府主導で「民族共生象徴空間」ウポポイも設立されたが、アイヌを観光資源化しようとする魂胆が見えてならない。