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インヘリタンスのSSDDのレビュー・感想・評価

インヘリタンス(2020年製作の映画)
3.1
■概要
絵に描いたような裕福で地位が高い職業を持つ家族、父は政財界に強く影響を持つ人物だが厳格だった。
弟は選挙戦を目前に躍起となり、長女は大きな裁判として法廷で罪を問うていた。
そんな中、父が心臓発作で亡くなる。
父から長女に対して死後に渡すように指示されたものを開けると…深淵に堕ちるような負の遺産を手にしてしまう。

■感想(ネタバレなし)
暗く重めのサスペンス映画で、権力、保身、慢心、虚栄、隠匿という要素を強く押し出す。

権力の陰にあるものが色濃く描かれるため、一見華やかに見える家族の光が濃いほどに陰も強くなる。

ただそもそもの前提に無理があり、動機、行動に不自然さを感じてしまうため、ラストまで観てもそこまでカタルシスや納得感がなく、主人公の言動がただヒステリックで病的に感じてしまうため面白みに欠ける。

コメディ映画のイメージが強いサイモン・ペッグが体を絞り挑んでいる点や、他作品と違う知的で無骨なキャラクター性には魅了された。

人にオススメするかというと…自分が観たことを忘れて二度見する危険性があるくらいの作品だと伝える。












■感想(ネタバレあり)
・父親
意味が分からない点が多い。
地下で男を生かすのか。娘の実父となって呪いのように娘に対して血の繋がりがないことを気にしてるのだったらさっさと殺せばよかった。
遺言の意味は真実を掘り起こせば、長女が何故遺産の額が明らかに少ないのか…つまり血の繋がりがないことを露見するからということなんだろうが、謝る意味はなんだ?始末つけなかったことか?
謝りながら始末つけてくれと悪人だと伝えない意味が理解できない。

・正義感
長女は品行方正で正義感という割に、恐喝したり保身に走るという実際その場面になれば弱いという描写は好きだ。
すごく人間的で異常な意志ではなく葛藤の中、自分以外の家族の幸せまで破壊してしまうという恐怖は、自己のエゴの正義感と天秤にかけた時には揺るがない方が狂ってる。
その上でどのような理由でも人が監禁されていたら解放したいと思うのは当然のことだと思う。

・家族愛の描き方
あまりにも薄いし、父親が母親以外に女がいる意外性はまったくない。
弟、母親の品行方正であるように描いてもいないので、不正や不誠実だった事実に驚きを感じない。
これは完全に描写不足で観る側に説得力を持たせられなかった脚本の問題。

・狂気の男
邪悪と称されるには小物。演技は怪演とギャップがある。サイモン・ペッグの役者魂には敬意を評したいが、勿体ないとしか言いようがない。

・総評
監禁されていた男は父親の右腕、しかし手段を選ばず無法の限りを犯し、殺人も厭わないためコントロールできず手を焼いて監禁。
奉仕の恩や、知られている不正の大きさや、感情から監禁し殺せなかった。
母親と一時親密になり、長女は血のつながりがあるの方がまだ良かった気がする。

なんだかチグハグな脚本のせいで諸々勿体無い作品。衣装、監禁されていた男の雰囲気や知性的で記憶力の高さなど目を見張る要素があったのに残念。
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