ナガノヤスユ記

風船のナガノヤスユ記のネタバレレビュー・内容・結末

風船(1956年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

左幸子と芦川いずみの邂逅、『あのこは貴族』じゃん(逆)。北原美枝はさながらゼンデイヤ。戦後の日本を舞台に、持てるもの持たざるものの不均衡がベースにあるが、出てくる人々は誰もが根源的な生への不安を抱えて生きている。それは、カメラ会社の高慢ちきなドラ息子でさえも。皆がいろいろなことを欲望するけれど、利己的にせよ利他的にせよ、思いはまったく空回りして、なんだかむなしい。
そして、最後。この物語をとおして無垢 (清廉とはまた違う) であり続けた、娘が踊っている。それを見つめる父親。執拗に繰り返される切り返し。最後まで娘の視線が返ってくることはない。て、これ『燃ゆる女の肖像』じゃん (逆)。あの不動のラストショットに堪えれる俳優はそういない。森雅之、さすがの貫禄としか言いようがない。
全盛期の日活。