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ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語〜のStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

「ダブルトラブル」の車輪の下り、めちゃくちゃ笑ってしまった。あれは深刻な事故につながることが容易に想像でき、ウィル・フェレルのこれまでの作風だと途中でヒロインを殺しかねないので、「シグリットはここでフェイドアウトか?」と覚悟しながら観るドキドキと、舞台に這い上がって振り付きで歌い続けたど根性は近年どんなアクション映画で観たスペクタクルよりも心拍数が上がった。

ラーズがアメリカ人の若者たちに辛辣すぎる気がするが、ウィル・フェレル自身アメリカ人だからかステレオタイプ描写に手心を加えていない。アイスランド人の描写は「エルフ信仰」というあるのかないのか分からない解像度の低い北欧イメージを利用しているのに、アメリカ人批判となると「スタバ」、『ゲーム・オブ・スローンズ』、「アメリカ人はヨーロッパに来るな」とめった切りである(余談だが、ウィル・フェレルは『エルフ』というクリスマス映画で主演している)。

主人公二人が小さな小屋に住むエルフに祈りを捧げるシーンが三度ある。「もしかして小屋からエルフ出てきてリアリティライン崩れる?」と思ったが、ラーズを殺そうとした銀行マンのヴィクトールを成敗した後ドアをバタンと閉める音だけ聞こえるという巧みな演出だった。

北欧のミステリー小説やドラマを見慣れているとどんより曇ったイメージがあるのだが、ウィル・フェレルがヴァイキングのイメージにぴったりはまっていて陽気さしかない映画である。

ピアース・ブロスナン演じる超イケメンおやじが村中の娘に手を出しており、それもあって妹かもしれないシグリットとの関係にラーズは今ひとつ乗り出せなかったのだが、一時帰国してそうではないことを知り、決勝に挑む決心をする。ウィル・フェレル脚本作品ではプロット運びに感銘を受けることが多い。

地元のみんなが集まる酒場でオラフが「ヤォヤォディンドンしか聴きたくない!」と言う。原曲があるのかと思って調べてみたら映画オリジナルらしい。「ユーロヴィジョンで勝てる芸術性に優れた曲と日常で何回でも聴きたくなる曲は違う」というのは、ある種優れた音楽批評である。
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