りっく

父、兵士、その息子のりっくのレビュー・感想・評価

父、兵士、その息子(2020年製作の映画)
4.2
まさにアメリカ映画的なドキュメンタリーであり、一見すると愛国心に満ち溢れた物語であるものの、盲目的に国に仕えることを絶対的価値としているからこそ生じる負の側面を浮かび上がらせてみせる。

マッチョイズムだけで生きてきた父親が、戦場で負傷し足を切断することで自分の存在意義を見失い、苛々の矛先を周囲に向けてしまう痛々しい姿。そんな父親が敷いたレールを期待を背負って進んでいた次男の事故死。そして進学を目指していた長男が、彼の代わりに父親の期待を察して入隊していく。

アメリカ合衆国のもと、アメリカ人とはかくあるべきだという理想。幾多のアメリカ映画でも描かれてきた姿は、一方でその道から外れてしまう者を切り捨て、その道しか生きる術がない者は絶望の縁に叩き落とされる。或いは、その道以外を生きようとする将来性豊かな者たちに、同調圧力をかけ、それ以外の人生を否定しようとする。
その歪みや軋み、生きづらさに胸が詰まる。
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