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ヤクザと家族 The Familyのohassyのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.5
器用な人間の生きづらさを描く本作。
やくざが生きづらいのはまあ悪いことではないかもしれないけれど、過去現在未来に渡って完璧に品行方正でなければ生きる場所がない世の中というのは、さすがに息苦しいというか、ちょっと狂っているとも思える。

一方で、例えば元やくざ、元殺人犯、元強姦魔、そんな人を、偏見なく受け入れられるかといえば、自信はまったくない。
個人的に知り合いや友人として付き合うのならばそれほど気にしないかもしれないけれど、例えばお隣に越してきたとか、妻や子どもたちの近い存在にと考えると、冷静になるのは難しいかもしれない。
そういう感情や考え方が相手を傷つけ、攻撃的にしてしまうのは分かっているのだけれど。

1人のやくざを通して、家族ってなんだ、つながりってなんだ、を映し出そうとする本作は、「やくざ」と「家族」という、イメージが遠い2つの言葉を組み合わせることで、描きたいテーマを浮き彫りにしようとする試み。
それはとても基本的でありテクニカルな技法で、遠ければ遠いほどテーマは明確に浮かび上がり、観客にも届きやすくなる。
「戦争と平和」しかり。

作品の本筋とは関係ないけれど、相手を傷つけることで何かを得てしまうと、必ず復讐されてしまうし、さらに復讐を重ねることになってしまうので、終りが見えない。
洋の東西を問わずヤクザやマフィアもの、騙し合い、殺し合い、そんな映画を見るたびに、「こういうことをやっているかぎり終わりはないよなあ」と思ってしまう。
もちろんそれが物語としての面白さだし、それがなければGOTなんて全く面白く無くなってしまうのでこれは文句ではない。
どちらかといえば自分自身に対する戒めだと思う。

誰かの犠牲の上で自分が得をしても、最後まで逃げ切れることなんて、きっとほとんどないよねえ。
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