むぅ

カラミティのむぅのレビュー・感想・評価

カラミティ(2020年製作の映画)
4.2
居住まいを正した。

家で映画を観ている時、まぁ人様にはお見せ出来ないような自堕落な格好で観ている。
それが恥ずかしくなるほどに美しいアニメーションだった。

西部開拓史上、初の女性ガンマンとして知られるマーサ・ジェーン・キャナリーの子供時代を描く。平原の女王 カラミティ・ジェーン誕生の物語。
アヌシー国際アニメーション映画祭クリスタル賞(グランプリ)受賞作品。

この色彩を何と表現したらよいのだろう。輪郭線を持たない美しい風景。油絵のようにも、サイケデリックにも感じる。
不思議な色彩で描かれる広大な自然と、そこで生きぬく彼女の意志の強そうな表情が心に刻まれる。

ポスターやアートブックがあるなら欲しいな。
あまり何かのグッズを欲しいと思った事がないのだが、この『カラミティ』の美しい景色を手元に置きたいなと思った。
"好き"が増えるのは楽しい。
自分がこういう色彩がとても好きだという事を知らなかった。
嬉しい。

これはきっと好き
これはきっと苦手
無意識にふるいにかけていたなと思う。もちろんそれもとても大切な感覚。でもそんな自分で作った"枠"の外には思わぬ感動経験があることもある。

出来ること
出来ないこと
それを自分で決めるよりも前に、"女性だから" "男性だから"という"枠"の中に押し込められる事が今よりももっともっと多かった時代に生きたカラミティ。
彼女がその"枠"を飛び越えていく姿に教えられる、"枠"の外に広がる世界。
自分の可能性は自分で決める。
その大切さと大変さを、美しいけれども時に牙をむく自然とリンクさせて描かれているように感じた。
輪郭線を描かないのも、ある種の"枠"を取り払っているからなのかなと思うほどだった。

"美しい"を、それ以外の言葉で表現する難しさよ。
鑑賞後、このまま眠りについたらこの世界に行けないだろうかと思ってしまう美しさ。
むぅ

むぅ