みーちゃん

ノマドランドのみーちゃんのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.9
若い頃から今でも、ノマド的な生き方に対し、どこか惹かれるものがあり、"自ら選択する"という側面と、"そうせざるを得ない"という側面の、どちらのイメージも私の中に常にある。良い時も良くない時も、いつも紙一重だと思う。

旅の途中で多様な世代との交流があったが、年齢によって漂流生活や季節労働の意味、置かれた状況、社会的立場が全く異なる。それがとても鮮烈。私より上の世代のファーンに対し、一秒も集中力を切らすことなく思いを馳せることができた。

だからこそ違和感があったのは、デヴィッド・ストラザーンの家に泊まった日の深夜、ファーンがベッドを抜け出し車に戻って眠ったこと。あのシーンを入れたくなるのは理解できるが、私には成熟していない演出に思えた。分かり易すぎて、あざとく感じたのと、何より今のファーンには似合わない(もし、あれが80代のノマドなら、それはそれは感慨深いシーンになったかもしれない)。他があまりにも自然だったので尚更引っ掛かった。

そして鑑賞後に感じたのは、はっきり言ってファーンはまだ若いということ。人間はもっともっと長く生きる。綺麗事ではなく、この先こそが課題なのだ。

だからノマドのリアルではなく、その一部分を通して個人の生き方と社会との関わり方、そして自身のスタンスへの問題提起だと思う。そういう意味では、とても考えさせられたし、私にとって心象風景の一つになった。

※ メモ:クロエ・ジャオ監督は1982生、当時38歳