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ザ・スイッチのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・スイッチ(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

着想と素材はいいのにビックリするほどつまらなかった。あともう二つ、三つ見せ場が欲しい。

殺人鬼によるエンパワメント物である。ついにフェミニスト・ホラーは殺人鬼まで女性の気付け薬として利用するようになったか。

違和感を感じた部分は以下の二点。
・ブッチャーが乗り移ったミリーがいきなりメイクうますぎ。あんな完璧なメイクが初心者にできるだろうか。
・ドーラというアステカ文明発祥の短剣に、「24時間以内に再び入れ替わらなければ、永遠に身体がそのままになってしまう」という設定だが、アステカ文明って24時間制だったの?
・警察に追われ、古着屋に逃げ込むミリーが乗り移ったブッチャーとミリーの友人達。友人達はブッチャー・ミリーに古着ではなくフェイスマスクを渡す。顔をフェイスマスクで覆う方が怪しいだろう。あんな高身長とボロボロの黒Tシャツの方が遠目だったら警察からの視認性は高いのでは。

キャスト(殺人鬼ブッチャーはヴィンス・ボーン、主演女優キャスリン・ニュートン)は素晴らしい。もっと面白くできたはずなのにそうはならなかった。なぜか。おそらく、痛快さが足りないのだと思う。ブッチャーはもっとミリーの身体で暴れられたはず(図工の先生の授業で何か目を見張るようなプレゼンテーションをするとか)。それが、大柄のブッチャーの身体でミリーが自分をいじめた同級生男子にマウントし返す程度に留まっている。

白人ヒロインの周辺にゲイと黒人の友人を配役するのは典型的すぎる。ファイナルガールは白人のティーンガールでなくてもいいはずだ。しかしこの二人が物語を盛り上げるために安易には殺されず、最後まで生き残っていたのはよかった。

この映画が「殺人鬼を使ってのエンパワメント物」だと最初に思ったのは、ブッチャーが乗り移ったミリーがギャングバングを仕掛けようとした男子高校生三人を見事に撃退したからである。あそこでスカッとしなかったかと言えば嘘になる。

最後には、大男の殺人鬼一人を女三人が倒す。奇しくも、2018年版『ハロウィン』とまったく同じ展開である。

自己肯定感の低い女子高生が、殺人鬼を返り討ちすることにより確固としたそれを手に入れる("I am a fuckin' piece")。生き残りとヒロインの自己確立が両立する結末だが、彼女のゴールが「大学進学」で「何をやりたいのか」がはっきりしていないので、いまいちキャラが立たないまま終わってしまう。これならブッチャーの成立背景をもっと掘り下げられたはず(彼の説明は、「精神病院に入院していた患者」という程度に留まっている)。

思えば「掘り下げ」は『スクリーム』以降のホラー映画(パターンそのものを楽しむメタホラー)以降のダメなやり方で、80年代のホラーはこの程度のあっさりした味付けだっただろうか。

このようなメタホラーと初代『ハロウィン』の違いは何なんだろうか。
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