実際に起こった性暴力事件を正面から描いた重〜い社会派ドラマ。事件の犯人や原因よりも被害者と事件を取り巻く環境に重点を置いて描いたのが特徴。見るのは辛いが良作ではある。
ろう学校という社会的に隔離された空間、それまでの人生で逃げ場をなくしてしまった生徒たち、性被害やいじめを元に構築された人間関係とヒエラルキー。長い年月をかけて作られた幾重にも重なる事件の要因と歪まされた人格を正すのは並大抵ことではなく、結果として傍観者はもちろん被害者まで諦めたように現状を肯定してしまう……という現実は哀しい。他の生徒を言い訳にしながら現状を維持し続けようとする校長の姿に某事務所や大学運動部を重ねてしまった。ラストシーンが示唆したようにこのままでは被害の連鎖が終わらないと分かってしまうのがまた哀しい。
問題解決には社会問題として多くの人が興味を持ち続け、支援していくことが必要だけど自分に出来るかと聞かれると相当に難しい。彼らから逃げ場を奪った最大の要因が外の世界での差別であるというのも含めて、自分も加害者のひとりであるという事実を改めて突き付けられた気がして考えさせられた。
