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川っぺりムコリッタのkassyのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
3.8
試写会にて
アフタートーク:荻上直子監督、プロデューサー

荻上直子監督最新作。

孤独な青年が新しく住むことになったハイツムコリッタ。隣の住人はずうずうしいし、墓石売る親子は怪しかったりと様々だ。そんな隣人達と交流を深める青年を通して生と死を描く。

荻上監督の作品は毎回美味しそうな料理が出てくるが、本作に出てくる料理は今までで一番質素かもしれない。
ご飯一膳、お味噌汁、そしてイカの塩辛。
そこに隣人の野菜が。
でもそれだけで人間は生きていける。
生きることは食べること。
1人で食べるよりも誰かと食べた方が楽しい。
そんな事を荻上監督らしい目線で感じさせてくれる作品だ。

そして、生きることは死と向き合う事でもある。
どうやって弔うのか。
その人なりの死との向き合い方、弔い方がある。

とてもミニマルな生活を描き、そのミニマルな中にささやかな幸せとドラマがある。

きっと見ながら自分なりの弔いに思いを馳せるのではないだろうか。

シビアな現実の中のユートピア。
そんな作品である。



以下、アフタートークメモ
NHKクローズアップ現代のゼロ葬を見た監督が、それを元に弔いをテーマに作った。

元たまの知久寿焼さんがご出演されているが、それは本作がたまの『夕暮れ時のさびしさに』がモチーフになっており、歌詞に出てくるお米や隣のお寺のお坊さんや牛乳などが映画にも登場する。

2017年には脚本は出来ていたが、1回目の映画企画がぽしゃり、(監督は恨み節)、ノベル化され、ようやく映画化の運びとなった。

2017年に脚本ができた状態で前作彼編むでイタリアの映画祭に参加した時に本作のプロデューサーと松山ケンイチさんに出会う。
これは運命だ!と感じ本作の主役に松山ケンイチさんをお願いした。
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