突然記憶を失った男が、治療のための回復プログラム“新しい自分”に参加することになる。思い出せないのなら、まずは新しい記憶を脳に作っていき、それをきっかけに過去を思い出すという感じだろうか。
この治療法の科学的な根拠は示されず、ストーリーは男性の仕草や表情を中心に描きながら進む。ポラロイド・カメラを思わせる正方形に近い画面と、どこかくすっと笑ってしまう主人公の飄々とした佇まいが強く印象に残る。
頻繁に通う事になった果実店の店主から「林檎は記憶力の低下を防ぐ」という話を聞いた時の男の反応から、物語は急展開するのだが、いかんせんそこに辿り着くまでの展開が乏しい。また男の過去に隠された謎に僕達観客が気付いても、そこからラストに至る流れの見え方ががらりと変わるわけでもない。
鑑賞後に公式が公開しているあらすじがとても説明的である事を知った。このテキストで書かれたあらすじがメイン?とさえ思ってしまうほどで、作品本編の存在価値をどう捉えたら良いのか、分からなくなってしまった。