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浜の朝日の嘘つきどもとのYOKのレビュー・感想・評価

浜の朝日の嘘つきどもと(2021年製作の映画)
4.5
大晦日にギンレイホールで映画館納め。いい感じに空いていて安らげた。働いてくれている方々、本当にありがとうございます。

普段、映画館で邦画をほぼ観ないので、一体いつぶりの邦画@映画館かな〜なんて。前回ギンレイホールで予告を観て気になっていた「浜の朝日の嘘つきどもと」が本日の1本目です。

まずね、配役がすごく良い。大久保佳代子さん最高すぎると言うか、役柄に合いすぎてた。面倒見が良くて、男にいまいち恵まれなくて、でも愛されていて、こだわりがあって…こんな人と出会えてれば人生豊かになるかもって思えた。

東日本大震災とコロナというダブルパンチを含んだ福島の南相馬市にある映画館を舞台にしている映画なんだけど、半分以上は主人公の莉子ちゃんとその恩師の話で、これがまた良いんだ。

「血の繋がり」を問う感じもいい。結局家族なんて他人と他人がくっ付く所から始まるわけだけど、そこから二人の血を継いだ子が生まれて、そこに縋りたくなるのは人の性って深いな。

その一方で「血の繋がりなんて所詮は幻想」って意見も凄くわかる。下手に近付きすぎると衝突するのが家族や夫婦や恋人やらなんやらなわけで、そこに疲れたり裏切られたりした経験がある人はこういう意見になるんじゃないかな。過度に人に期待しなくなるというか。

観る前はもっと東日本大震災のせいで!みたいな映画かと思っていたのだけど全然そんなことなく、きっかけはなんであろうと苦難ってのは訪れるけど、そのとき人はどう動くか…って感じの映画だったと思う。

借金もあって客もろくすっぽ居ない、そして今コロナ禍という危機の中でこの土地をもっと有効に活用できるんだ、と豪語する側も100%悪に描かれている訳では無いので嫌じゃない。そういう意見もあるしまともなこと言ってるなと納得させつつ、でもそれって人間味にかけてない?みたいな、理解出来る要素が残っているのが上手い描き方だった。

そこにプラスして出てくるベトナム人の実習生君。色んな問題含ませすぎじゃ?と思わなくもないところ、これまた全然押し付けがましくないどころか居ないと話が成り立たない大事な配役になってて上手だった。

映画好きには根暗が多い、の台詞に、なるほどならば私は一生根暗だ!と胸を張れる映画だった。フィルム映画の説明の仕方もすごく分かりやすくて勉強になった。

大きな映画館でなく小さな映画館で観れたのが何よりも嬉しい作品だった。観れて良かった。
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