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フィールズ・グッド・マンのohassyのレビュー・感想・評価

フィールズ・グッド・マン(2020年製作の映画)
3.5
サブカルマンガキャラクターがインターネットミームとしてひとり歩きして、ついにはアメリカ大統領選挙を動かすほどの存在になる。
そんなことがあるらしい。

僕が本作をレビューするには、あらゆる知識が不足している。
「ミーム」という言葉も、調べてみても明確な説明をすることが難しいので、なんだろうと思った方はご自身で検索してただければと思う。
日本のネットカルチャーの中でもこういう存在はあるだろうけど、なんだろう?
のまネコとか?

このカエルの「ぺぺ」は、ネット掲示板での悪ふざけ程度に使われていた頃は良かったのだけれど、だんだん過激な発言と一緒に使われるようになり、無差別殺人事件をきっかけに誹謗中傷や暴力のシンボルとなり、ついにはナチスの鉤十字と同列の「ヘイトシンボル」として登録されてしまう。
そしてトランプ大統領を生み出すに至る。
作者の意図とは全く関係のないところで、だ。

ぺぺが登場するマンガ「ボーイズ・クラブ」の作者・マットの苦悩は計り知れない。
「悪名高き」シンボルの生みの親として世界から誹謗中傷を受けることになるなんて、意味がわからない。
こういう現象で困るのは、「この人を、ここを止めれば終わる」ということが無いことだ。
誰のせい、というのがない。
だから、やめてくれと訴えることも、頭を下げることすらできない。

そもそもはキャラクターを扱う仕事をする身として興味を持った映画で、どれだけ引用され、二次創作されるかがヒットの大きな要因になる現代において、ぺぺのように思いも寄らない方向へ成長してしまう可能性は大いにあるわけで、一度毀損されてしまったイメージを取り戻すことはほぼ不可能と言っていい。
あらためてそう考えるとゾッとするが、とはいえバズることは現代のマーケティングにおいては欠かせない。
難しい。
例えば「いらすとや」さんは非常に優れたヒットの形を実現しているが、ときどき「これは‥」と思うような使われ方もしていて、そういうモノがバズってしまうと、もうそれは「そういうモノ」ということになってしまう。

本作はこのような悪夢と、マットの戦いを追いかけたドキュメンタリーだが、ボーイズクラブのキャラクターたちがサイケデリックなアニメーションとして何度も登場するので、非常にポップな印象に仕上がっている。
非常に温厚で優しげな印象のマットの戦いは続いている。
願わくばぺぺが、香港の平穏に貢献し、希望の象徴に生まれ変わりますように。
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