おーけせらけせら

海辺の金魚のおーけせらけせらのネタバレレビュー・内容・結末

海辺の金魚(2021年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

林 眞須美被告の『和歌山毒物カレー事件』をモチーフにとったのだろうか。

監督が描きたいことは伝わったが、突然町内の祭りシーンでかき氷を作っていた母親が周りの大人に腕を掴まれたり、最初のシーンではみかん畑のようなところで労働中にやってきたおじさん(役人のような人間)達にホースの水を掛けたり…観客の想像力に委ねられた部分/脚本の中で端折られた部分が多かったような気がした。行間を読む以上に、母親登場シーンに起きた出来事の前後を観客自身が補完しなくてはいけなかったところがやや苦痛だった。そのため、母親との思い出を回顧するシーンなどでは主役である彼女の痛み、感情などにあまり共感/没入できなかった。

もしカレー事件をモチーフに取ったのであれば彼女の娘さんのことなど、もっと深掘りできたかとは思うが、真実はあまりにも悲し過ぎるし、監督自身そこを描きたかった訳ではなかったのかな…
母親へ会いに行くシーン(顔を合わせるシーンなどは描かずにも)があったらもう少し彼女の気持ちに寄り添えたかもしれない。

また、ホースから流れ出る水圧が弱く、心の中で少しずっこけてしまった (おじさん達が避けるほどの水量ではなかった)。林被告はガンガン水を掛けまくっていた。

あと、金魚って海水でも生きられたっけ…(「あ、塩分濃度…可哀想…」という気持ちで見てしまった)。

役者さん達は皆さん素晴らしく、子供達登場シーンは演出をしないで自然に遊ばせたショットも多かったのでは?と思うくらいドキュメンタリータッチに撮られていた。
監督が若いということもあり、子供達の素直な表情を引き出す力はすごいと思う。

ただ、編集では画が「ぷつり」と切れるシーンが多かったように感じ、尻切れ蜻蛉みたいな印象を受けることがあった。

外の世界 (社会) に目が向いたこの世代の監督というのは奇特だと思うので、これからの作品や、小川監督はこの先何を描きたがるのだろう…というのがとても気になる。

これからが楽しみな監督です。応援しています。

かつて小川監督の短編を2本拝見したことがあるが、今作を見て、是枝監督の影響を受けすぎてしまったのかな…?と思う節があった。

周囲からの期待や言葉、メディアに『弟子』と書かれる度に無意識下に入り込んでしまう雑音などあるかと思うが、そういうものは気にせず、貴方が心の底から描きたいというものを観たい!!